旧約第9章 ドミーよ、童貞を捨てろ!!!
第166話 ロザリーは愛を騙り、ドミーは休息を楽しむ
レムーハ記 ドミー王の記録より
【カクレンの乱】で功を立てた【将軍】ドミーが帰還する。
【道化】からその報を聞いたムドーソ王国の貴族は、再び混乱した。
【守護の部屋】は機能せず、【ブルサの壁】を守っていた守備隊は壊滅し、【連合軍】は奪われた。
交渉が決裂すれば、ムドーソ城に侵攻してくるのは疑いない。
ムドーソ王国に残された有力な武力は【道化】とー、
大金で雇われたAランク冒険者1人であった。
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「なに!?ここから離れぬじゃと!?」
ムドーソ城で王族および貴族しか立ち入りができない【エルムスの館】。
ムドーソ王国初代エルムスが死んだ後の内乱【館の乱】で、チディメ陣営とラカゲー陣営の死闘が繰り広げられた場所。
今は豪華な調度品や宝石が散りばめられた宮殿となっていて、昔の惨劇の面影はない。
その中の1室【ディアナの間】で寝ていたあたしを、誰かが訪ねてきた。
殺すこともできたけど、ひとまず相手してあげよう。
愛する人がここにやってくるまで、あたしは暇なんだ。
「そうよ。ムドーソに帰還しようとするドミーの暗殺なんてごめんだわ。あいつがムドーソに帰ってきたなら話は別だけどね」
最高級の寝台を堪能しながら応えてやる。
わざわざ寝台から出る必要はない。
羽毛布団から頭を出すだけで十分。
視線の先には、王国首席秘書官という肩書だけを与えられた貴族、ランケがいた。
貴族から面倒なことを全て押し付けられているだけの小物だが、本人は気づいていないらしい。
滑稽で哀れだわ。
「何のために大金を払い、【エルムスの館】の立ち入りまで許したと思っている!【ブルサの壁】のオーク討伐も拒否しおって!大人しく命令をー」
「なんであたしの方からドミーに会いに行かないといけないわけ?あいつは、あたしが自腹で買った奴隷よ。あいつの方から会いに来るのが筋じゃない?」
「貴様あああ!」
ランケは【七宝の剣】を抜いた。
噂によると、生前仲が悪かった友人の剣らしい。
きっと、本当は好きだったのね。
「このランケを舐めるなよおおおおお!」
だからー、
「…え?」
寝台から飛び出して、一瞬で奪ってやった。
【七宝の剣】を。
人が大事にしているものを奪うのって、この上ない快感。
「ふーん、良い剣じゃない。向いていないことをしているあんたにはもったいないわよ」
「な、なぜ裸なんだ…!」
「あたしは寝るときは服を着たくないし。それよりー」
剣を抜いて、ランケに突きつけた。
「せっかくだから、試し切りしてもいいかしら?」
「ひいっ!こ、こんなところで我を殺せばタダではすまぬぞ!」
「なんだそんなことか」
ランケの首筋に、剣を這わせる。
「あたしなら、ここの人間全員を細切れにして堂々と帰れるから安心してちょうだい。【道化】も大したことないわ」
「あ…あ…エンギ、助けて…」
「…はいはい。もうおしまいね」
そろそろ弄っても面白くなさそうなので、剣を投げ捨てる。
「まあ、あたしに向けて剣を向けた勇気だけは褒めてあげる。だから、秘密を1つ教えてあげるわ」
「秘密…?」
「そう、秘密」
「あたし、ドミーのことが好きなの」
でも、対等な関係にはいたくない。
「だからー
束縛して、
独占して、
脅して、
傷つけて、
泣かせて、
恐怖させて、
謝らせて、
踏みにじって、
むりやり言うことを聞かせて、
尊厳を奪って、
従わせたいの。
いつか死なせてといっても死なせてあげない。あたしなしでは生きていけないようにしたい。あたしが欲望を満たすため、無理やりでも生き続けてほしい」
その日が来ることを想像するだけでぞくぞくする。
早く帰ってこないかなあ。
あたしだけのドミー。
「それが、あたしの愛なの」
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「いやっほおおおおおう!」
一面に広がる海と常夏の太陽!!!
「ドミー、待ってよ!!!」
フリルの付いた赤い水着を来たライナ!
「ドミーさま!お待ちください!水着のサイズが…」
豊満な胸を青いビキニに収めるのに苦労しているミズア!
「僕も行きまあああああす!」
ワンピース型の白い水着が初々しいイラート!
「【ドミー軍】よ、今日はみんな楽しもうぞおおおおお!」
「はっ!!!」
なんだかんだ再び300人まで増えた【ドミー軍】!
これだけの女性と共に俺は少し狭い海に飛び込んでいく!!!
「冷たいけど、気持ちいいわ、ドミー!」
「ドミーさま、本日はありがとうございます!」
「ライナ先輩、あそこの岩陰に行きましょう!」
そうそう、こういうのでいいんだよ。
みんなが楽しむのを見ながら、俺は1人ごちた。
戦争とか、政治とか、肩が凝ってしまう。
今だけは、心地よい水の中に身を任せよう。
まあー、
今は夏どころか冬なんですけどね!!!
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この時は平和な休息を送れると思っていた俺だったが、結局、色々な事件に巻き込まれることになる。
そして、童貞を捨てる。
そう!
童貞を捨てるっ!!!
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