第147話 死と生の狭間、ついでに〇ック〇

 コンチさま向け報告


 【将軍】ドミー、オーク女性コウトの【支配】に成功

 オーク女性の【支配】は初

 『和平のための連合』に影響力を持つコウトの【支配】により、交渉におけるイニシアチブを獲得

 



 【ビクスキ】レベルアップまであと2人



==========



 「おほおおおお!」

 倒れ込んだコウトを支えていると、やがて100歳とは思えないほど若々しい声を出した。


 …この年齢の女性を【絶頂】させたのは、俺が世界で初めてかもしれない。

 

 これも【永遠の平和】のため。


 獲得したコウトのステータスを確認する。




 和平を望むオーク コウト(【強化】後)


 種族:オーク


 クラス:使者

 

 ランク:B


 近接:0


 魔法:0


 統治:91


 智謀:82


 スキル:なし


 個性:【挺身】【論客】【悔悟】


 一口コメント:スキルを使えれば…


 服従条件:これ以上オークに犠牲を出させない



 まさに身を挺して部族を守らんとする使者といったところか。

 

 服従条件は、先ほど満たしている。

 つまり、今この瞬間から俺の意のまま動く存在だ。

 昨日【支配】したレジーナのように。


 「あら、急に足腰が!」

 「俺は通称【奇跡の右腕を持つ男】でね。触れた女性は途端に元気になるのだ」


 【絶頂】を済ませたコウトは驚愕する。 

 俺のスキルの効果により、体の痛みや歪みが治癒されれば当然だろう。

 ぴょんぴょんと飛び跳ね、死を待つ身だった人生に新たな楽しみを見出す。


 「ま、まさに神の如き御業!!!このコウト、残り少ない人生の全てをかけ、ドミー将軍に忠誠を誓います!!!」

 「さっそく、各地に散っている部族30000人を呼び戻してもらおう!やってもらいたいことがあるからな」

 「はっ!」

 「…あと食料分けてください。うちの軍、急に大所帯となったので」

 「喜んで!」

 

 「「「ドミー将軍、我らが部族をお導きください!」」」

 残りの男性使者15人も敬服する。

 女性ならそのまま【支配】しているところだが、残念。

 だが、


 「当然だ!!!これからムドーソ王国とオークは友邦!現在は一部のみだが、いずれは50万人の同胞全てと手を結びたい!!!!」


 というわけで、俺の構想した【永遠の平和】は順調な滑り出しを見せた。

 

 オーク民族50万名のうち、女性は半分とするなら25万名。

 全員とは行かずとも、長い時間をかけて接触していく。

 俺は接触した女性のステータスや個性を見出せるため、見込みのある者はどんどん出世させよう。

 

 女性は大喜びだろう、今まで日陰者だった自分たちが歴史の表舞台に躍り出るのだから。


 男性側の抵抗もあるからバレないようにだがな。

 コウトの場合は80年前の悲劇の当事者というがあるため、男性も逆らえない。

 そういった権威づけの材料を今後考えていこう。


 いずれ、俺の因子を受け継ぐ女性も続々と誕生していく。

 教育も男性との格差を矯正し、出来るだけ多くの女性が部族内で権力を持てるようにするのだ。

 オークを男性が俺に対する叛逆を企てた時、それを制止できるようになるまで。


 このように、寛容を、平和を、自由を、愛を、共存を、性差撤廃を叫び、皆と手を取り合いながらー、




 数十年かけてオーク民族を従順な存在に変質させよう。

 誰にも気づかせないままに。

 

 その代わり、俺はオーク民族の繁栄や過去負った痛みの回復に責任を持つ。


 それが、今後人間とオークの間に交わされる契約だ。



==========

 


 「ここはうちの部族が【ユルタ】を置く場所だ!」

 「大変だ!馬3頭が逃げ出してしまったぞ!」

 「男ども!ムドーソ王国の人間が用があるってさ!」


 最初の会談が終了した後、『和平のための連合』は続々と草原地帯に姿を現した。

 それぞれ部族ごとに移動式住居【ユルタ】を設営し、仮の宿泊地とする。

 もともと遊牧民であるためか、大量の羊や馬を引き連れていた。

 

 死の雰囲気が充満していた草原地帯は、途端に賑やかとなる。

 内心に悲しみや怒りを抱えながらも、新たな時代に向かおうとする集団が発する正の力。



==========



 数日かけて引越し作業が落ち着いたのを確認した後、俺は『和平のための連合』の宿泊地へと向かった。

 コウトと共同で手の空いているオークを可能な限り動員し、任務を告げる。


 「俺に含むところがある者がいるのは知っている。しかし、今は新たな時代を切り開くために我慢して欲しい」

 「このコウトの目が黒いうちは、和平の精神に反する行動は慎むように」


 「「「…分かりました」」」


 ライナとミズアを念のため護衛につけたが、露骨な敵意を露わにするものはいない。


 オークたちは各自解散していき、俺の命じた任務に取り掛かる準備を始めた。


 「コウト。オーク側の遺体の収容はひとまずお任せする。どのような形式で葬っても構わない」

 「…ありがたき幸せ」

 「作業が終われば、和平条約の案について改めて話し合おう」

 

 要するに、戦場に散らばる遺体の収容および埋葬である。

 新しい時代を切り開くため、そのまま放置して自然に帰すわけにはいかない。

 簡易的でもきちんと埋葬し、戦場もある程度清める。


 俺が率いる【ドミー軍】はアルハンガイ草原に倒れたムドーソ王国軍、『和平のための連合』は【奇跡の森】に倒れた叛乱軍を担当する。


 面白いことは何もない。

 戦争がもたらす惨禍を再確認しただけ。

 家族のもとに返す余裕はないため、遺品を回収して埋葬する。


 印象に残った出来事は、2つだけあった。


 「ライナ。【アーテーの剣】のヘカテー含む3人の遺体が確認されたようだ」

 「そう。やっぱりアルハンガイ草原にいたのね。まったく、エリアルは友人を放って今どこにいるのかしら…」

 「どうする?」

 「埋葬には参加する。今は道を違えても、仲間だった人間だしね…」


 1つ目は【アーテーの剣】構成員の遺体3名の発見。


 「ゼルマ。オークたちの動きに不審はないか?」

 「今のところは。見てみる?」

 「ああ。しかし1カ所にかなりの人数が集まっているようだが」

 「エセンという少年が発見されたらしいわよ。トイラオ部族唯一の参加者で、15歳の少年。すがりついて泣いてるのは、きっと母親ね」

 「…そうか」


 2つ目は、ライナおよびミズアと同じ歳の少年兵の遺体。




 【ブルサ回廊の戦い】に費やした時間よりはるかに多くの時間を、遺体の収容と埋葬に費やした。



==========



 30000人のオークの協力と昼夜兼行の作業もあり、収容は順調に進んだ。


 ある程度区切りをつけたのは、ランケと【道化】が【奇跡の森】に至る数時間前。

 【ドミー城】に残留した非戦闘員からの報告で、到着時間はある程度把握している。

 その時間でコウト含む責任者の下を訪問し、和平条約の件について改めて話し合った。


 「それでは、一度戻る」

 

 会見終了後に【ドミー軍】の陣営に戻ろうとした時、それは起きる。

 

 「すみません!ドミー将軍」

 赤子を抱えたオークの女性だった。

 赤子は、明らかに苦しそうにしている。


 「将軍は手に触れた女性の病を癒すとお聞きしました。触っていただけないでしょうか?」

 「つまり、女の赤子か。良いだろう」


 優しく触れると、赤子はぴくりと体を震わせる。


 100歳の次は0歳の女性を【絶頂】させるとはな…


 赤子はたちまち元気を取り戻す。

 そして、俺の【支配】下に置かれた。

 将来的には【永遠の平和】を構成する一員でもある。


 「あ、ありがとうございます!…あっ!?」

 「体が冷えているぞ。子供のためにも、体調管理は大切だ」

 「は、はい…なんだか、気分が良くなりました」


 ついでに母親も【支配】しておく。

 どのような形にしろ、人助けは気持ちの良いものだ。


 その時、ナビの声が響いた。





 ぱんぱかぱーん。ドミーさま。【ビクスキ】レベルアップ、おめでとうございます。

 

 おお!この情勢下でスキルのレベルアップはありがたい。何ができるようになったのだ?


 女性との交わりです。


 …ん?




 〇ック〇です。

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