第102話 【ドミー城】でオーク歩兵をざまぁする2.策略

 「今だ!全員攻撃開始!」


 俺たちの目標は、国境線の防衛施設に籠るオーク兵数千人を引きずりだすこと。


 そのため、今【ドミー城】に迫るオーク歩兵500人を真の実力を隠しながら撃破し、「手ごわいが追加で兵を出せば撃破できる敵」と思わせる事。


 こちらが現在出せる兵数は、81人の女性と俺で82人。

 俺の【強化】でAランク相当まで強化できるが、実力を隠すため基本はCランクまで力を抑えて戦う。


 この状況で目標を成し遂げるのに必要なものは、策略だ。

 全部で5つある。


==========


 「放てえええええ!」

 俺の合図に従ったアマーリエが全軍に指示を下すと、冒険者たちは城壁から一斉に身を乗り出した。

 そして、城壁をよじのぼりつつあるオーク兵に攻撃を開始する。

 ぎりぎりまで城を無人に見せかけ、敵が接近してきたところを叩く【空城の計】だ。

 

 「一番槍はこのヘルガです!」

 「よく来たな糞オーク!地獄に落ちやがれ!」

 「【ドミー】城に踏み入れたこと後悔しなさい!」


 まず攻撃を開始したのは、遠距離攻撃が可能な【魔法系スキル】の使い手である。

 【ファイア】、【ウィンド】、【サンダー】【ウォーター】、【ソイル】、【ポイズン】。

 万物を構成する4元素を始めとする攻撃魔法を、目前まで迫ったオーク兵目掛けて斉射した。

 

 「なっ、やはり伏兵がー、ぐあああああ!」

 「ギャアアアアア!」

 不意を突かれたオーク兵士たちは城壁から転げ落ちるほかない。

 後方から突撃していたオーク兵と激突し、事前に堀っていた空堀の中まで落下した。


 「怯むな!接近戦ではこちらに分がある!」


 一部オーク兵はなんとか城壁に到達するもののー、


 「おっと!あたいらを忘れてもらっちゃ困るぜ!」

 「この切れ味、受けてみな!」

 「貴様ら…」

 

 剣や槍を携えた【近接系】スキルの使い手がそれを阻む。

 肉体を強化する【ヴァイス】や武装を巨大化する【ヒュージ】を発動し、身体能力で勝るオーク兵を城壁から突き落とした。


 城壁を占拠しつつあったオーク兵は一瞬で排除され、俺たち【ドミー軍】は優勢を確立する。


 それでも諦めずに登ろうとするオーク兵もいたがー


 「「「【ドミー城】に立ち入るものは死あるのみ!」」」


 全て叩き落とされ、近づけるものはいない。

 策略の第1、「奇襲で優位に立つ」は成功を収めた。



==========



 「貴様らああああああ!!!ラグタイトの防御がありながら、なんという醜態だ!」


 【ドミー城】攻撃で先鋒を務めるオーク兵、カサは怒りの咆哮をあげる。

 城壁に沿って掘られた空堀で戦況を見守っていたが、劣勢になる一方だ。

 自身も剣をかざして突撃しようとするもー、


 「ガッ…!!!」

 肩に痛みを感じ、立ち止まってしまう。

 【魔法系】スキルで狙われていたらしい。

 幸いかすめただけで軽傷だ。


 たがー、


 鎧のすきまを狙って…


 カサは戦慄を覚えてしまう。

 オーク歩兵はスキルに耐性がある黒い金属、ラグタイトの鎧をまとっていた。

 だが、により、ラグタイトは重要部位のみ採用されている。

 残りはただの鉄だが、黒く塗ることで欺瞞工作を施していた。

 その鉄の部分を、正確に狙われている。


 「ええい、スキルなんぞ使いおってこの卑怯者がああああ!!!」

 カサは人間が使う怪しげな術、スキルによってオーク歩兵の弱点を看破されたと悟った。


 だが、ここで引く訳にはいかない。


 「ダメだあ!一旦逃げるぞ!

 「貴様、逃げるとはオークの風上にも置けぬ奴!」

 「な、何をー」


 城壁から離れようとしたオーク兵を1人斬る。


 「逃げる奴はみんなこうなるぞ!アルティパ部族の者たちよ!集結するのだ!」

 「「「はっ!!!」」」

 そして、自らが率いてきた部族を呼び戻した。

 総勢90名ほどだったが、呼びかけに応じて集まったのは50名ほど。

 他はすでに戦死するか負傷していた。


 「これより城壁に一斉突撃する!恐るな!あやつら1人1人はCランク程度の力しかない!死こそ【オークの誇り】を取り戻す最善の道である!!!

 「「「仰せのままに!!!」」」

 カサは、ムドーソ王国に敵意を抱くオークの中でも特に過激派だった。

 それ故味方は少なかったが、逆に言えば味方との結束は固い。

 つまるところ、全員過激派であった。


 「「「突撃いいいいい!!!」

 そのため、総勢52名は死を前提とした任務もためらわず、一丸となって突撃した。


 とある地点へと。



==========



 「ゼルマの言う通り、ラグタイトは騎兵に優先的に配られていたようだな」


 【ドミー城】の城門の上で俺は戦況を見守っていた。ライナ、ミズア含む護衛に従え、何かあったら即応できる体制を取っている。 


 「鎧の隙間を狙えば、Cランク程度の力でなんとかなりそうね」

 「一部のものが勢い余ってBランク程度まで出してしまってますが、おそらく問題ないかと」

 

 ライナとミズアもそれに同調する。

 策の第2、「敵の鎧の弱点を突く」も成功だ。


 ー歩兵の鎧は鉄とラグタイトの混ぜ物ね。

 ー…確かか?

 ーええ、重要部位だけだわ。


 実は昨日、鳥を使って偵察を行う【サイト・ビヨンド・サイト】で監視していたゼルマから報告を受けている。

 叛乱の主力である騎兵はラグタイトで全身覆われていたことを考えると、ラグタイトの総量自体が少ないのだろう。

 敵も余裕がないということだ。


 「一部の敵が城門に向かって突撃!」

 その時、1人の冒険者から報告を受けた。

 50名ほどが城門に向かっている。

 元々城門を攻撃しているオーク兵(ほとんどが戦意を失いつつあるが)を含めると、なかなか手強い相手だ。


 「よし、ライナ!ミズア!【クイック絶頂】の用意だ!!!」

 「…大きな声で言うとこっちが恥ずかしい」

 「ドミーさま、よろしくお願いします」


 ライナが腋、ミズアがお腹を差し出す。

 どちらも極上の名器だ。

 両腕で掴み、2人の【絶頂】と能力の覚醒を引き出す。


 「ああっ!ちょっと、今日強い…!」

 「ドミーさまは、昂っておられます…」

 

 2人はビクビクと体を震わせるも、これで準備は完了。


 「第3の策を披露するぞ!」

 そして、俺は城門から城壁へと飛び降りた。


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