第73話 ドミー、2人と【ハーレムの契り】をかわす

 「…うん?」

 「…ドミーさま?」

 「…どうした?2人とも」


 反応は三者三様であった。

 

 「いや、どちらも愛するというのがよく分からないというか…」

 「その、どういう関係になるのでしょうか」

 「難しく考えるな!」


 俺は、勢い余って上着を思い切り脱いだ!

 久々に、この世界の男性の象徴【シックスパック】を見せつける。


 「なんで脱ぐのー?!」

 ライナが素っ頓狂な声を上げるのもお構いなしだ。

 「ドミーさまの肉体、美しいです…」

 ミズアはうっとりしている。


 「俺は男性だ!2人同士でパートナーを作るというのは、女性が当事者の場合に過ぎない。俺は、この世界に本来存在しない男性として、ライナ、ミズアと新たな関係を切り開く!」

 

 ついでなので、【シックスパック】を2人に見せつける。


 「王を目指す者として、それぐらいの気概があって当然だろう!」

 


==========



 「フフフフフ…」

 私はしばし呆然としていたが、やがて笑いが止まらなくなった。

 「ライナ…」

 ミズアは驚いているが、やがて気付くだろう。


 ドミーが、

 

 「いいじゃない。乗ったわ私も。ミズアは、私とドミーを愛するのは嫌?」

 「い、嫌じゃないです!大好きな人と、親友と同じ空間で過ごせるなら…あっ」

 ミズアも気付いたようだ。

 今日一番の笑顔を浮かべ、ドミーを頼もしそうに見守る。


 そうね、どうせこの世界のルールに逆らうなら、とことんやってやろうじゃない。

 不浄と言われることの多い男性と、愛を成立させる2人の女性。

 もしかしたら激怒する人間もいるかもしれないけど、この3人ならきっと…


 「ただ、一つ聞かせてドミー。その関係は、私、ミズア、ドミーの3人で結ばれるの?」

 「いや、多分あと2人ぐらい増える」

 「増えるんかい!」



==========



 「まあ聞け。俺なりに考えがあってのことだ」

 俺は、ムドーソ王国の創始者エルムスの暴虐について知り、対策を考えていた。

 すなわち、王がもし暴君となった時、それを阻止できる組織づくりである。


 「俺は、人格、スキル、相性を鑑みて、生涯寝食を共にできると感じた女性と【断金の交わり】を結ぶ。そして、その女性にはある役割を与える」

 「役割…ですか?」

 「もちろん、ミズアにも役割を果たしてもらう。すなわち…」


 俺は自分の胸を叩いた。

 「王を止める権利だ!」

 

 「王を、止める…?」

 「ドミーさまを止めるだなんて、そんな…」

 自信なさげな2人だったが、恐らく役割を果たすだろう。

 2人とも、野望にまみれた俺には無い高潔な人格を持っているのだから。


 「俺はムドーソ王国を無血占領し、人を活かす王となる。だが、歴史が証明しているように、俺が永遠に清廉潔白であるとは限らない。そうでなくても、ストッパーのいない組織は脆いものだ。悪いが、頼まれてくれるか?」


 「…分かったわ。元々、ドミーとはそんな約束をしているものね」

 「そこまで仰るなら、このミズアも命を賭けます」


 「ありがとう。だが、ライナとミズアも、戦場では頼りになるが、政治の世界では話が別だろう。これは優劣ではなく、個性というやつだな」

 「…確かに、ミズアは槍を振るう以外に才はありません」

 「私も、そういうのはちょっと苦手かも…」

 「だから、そういう方面で人材を得れば、新たに【断金の交わり】を結ぶかもしれない。そういう意味でいったのだ…別に下心はないぞ」

 



==========



 「さあ、そろそろ俺たちで新たな誓いを立てよう。名前は…」

 レムーハのルールに叛逆することを示すため、逆から読むか。

 いや、ハームレではいささか語呂が悪い。


 「ハーレムだ。【ハーレムの誓い】とする」

 「ドミーにしては、まあまあなセンスね」

 「かっこいいです!ドミーさま」


 評価はまあまあか、まあいいだろう。

 名前など、後からどうとでもなる。


 「【男性ドミー】!ライナ、ミズアと愛を分ち合い、2人に自らを制止する権利を与える!」

 「【蒼炎のライナ】!ドミー、ミズアと愛を分かち合い、王を制止する役割を果たす!」

 「【竜槍のミズア】!ドミーさま、ライナと愛を分かち合い、王を制止する役割を果たす!」


 「「「この【ハーレムの誓い】は何者にも破られることはない!!!」」」


 こうして、俺たち3人の役割は新たな段階へと進んだ。



==========



 「ドミーさま。ミズアは、もう我慢が出来ません…元々、このようなことを行いたいと1日中思っていました」

 「ちょ、ちょっとミズア!?」

 「ほら、ライナも早く脱いでください」

 

 【ハーレムの誓い】が終わった途端、ミズアは再び服を脱ぎ始めた。

 ライナが動揺するのもお構いなしである。


 「ドミーさま、誓いを立てた証をミズアとライナに見せてください。それが、王たる者の責務です」

 「よしわかった!」

 俺も服を脱ぐ。

 「ど、ドミーまで!誰か見ていたらどーすんのよお…」

 

 手で顔を覆っていたライナだったが、やがて意を決したように顔を上げる。


 「抜けばいいんでしょ!脱げばあ!」

 【炎魔導士のドレス】を脱いで、生まれた時の姿になる。

 

 「起きていればローブの暗殺者にも即応できるだろう。今日は一日パーティーだ!」

 「ミズアを、どこまでも可愛がってください!」

 「もう突っ込むのも飽きたわ!徹底的にやってやる!」


 俺たち3人は勢いのままベッドに飛び込んだ。

 そして、共通する言葉を発した。


 「「「俺たちの戦いは、これからだ!!!」」」



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 レムーハ記 ドミー王の記録より抜粋


 王に最も近い重臣たちは【ハーレムの誓い】と呼ばれる誓いを立て、王国の経営に参画した。誓いを結んだ者は王を制止する役割を与えられ、いくつかの場面で重要な役割を果たしたとされる。この制度により、王は在位中失策を犯すことがほとんどなかった。

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