第62話 ドミー、ライナとミズアを励ましつつ、連携を見直す

 襲撃後、俺たち3人は会館でしばらく待機することとなった。

 アマーリエとゼルマも駆けつけ、周辺を警備してもらっている。

 日も高くなったし、さすがに大丈夫だろう。


 それは良いのだがー、


 「ごめんね、ドミー…」

 「ドミーさま、申し訳ありません」


 ライナとミズアが、落ち込んでしまっている。

 2人とも優秀な【スキル】使いとはいえ、まだ少女なのだ。


 「私がもっとしっかりしていればー」

 「ミズアの不甲斐なさがー」

 「おいおい、そんなことを言う必要はないぞ?」

 

 俺は、ライナとミズアの頭を優しくなでた。


 「くうん!な、なによいきなり」

 「あっ…すいません、ちょっとびっくりしました」

 「俺たちは誰一人死んでいないし、怪我もしていない。敵は目的を果たせず逃げ出した。これを勝利と言わずして何とする…ってやつさ」


 2人は少し驚いているようだが、俺は自分が果たすべき役割を果たしたい。

 

 ーもう、そんなことを言う必要はないわ

 ードミーさまは、ミズアたちの立派な指揮官です


 昨日、2人は俺を励ましてくれた。

 今度は、俺が2人を励ます番だろう。


 「ミズアが真っ先に立ち向かってくれたおかげで、俺とライナに敵を迎え撃つ時間的猶予ができた。それに、【竜槍】の投擲で、敵に逃走を決断させてくれた」

 「…ミズアは、役割を果たすことが出来たでしょうか?」

 「勿論だ。ありがとう」

 「あ、ありがとうございます…!」


 次はライナだが、少し遠慮がちだ。


 「わ、私は褒められるようなことなんてー」

 「それは違う。正確な【ファイア・バースト】で、敵は手の内を明かさざるを得なくなった。最初【魔術書】のみで戦闘を行っていたのは、ギリギリまで切り札を隠したかったからに違いない。ライナのおかげで、貴重な情報を得ることが出来た」

 「そうかな…」

 「それに、敵の予想外の【スキル】にもひるまず、俺の前に立ちふさがって守ろうとしてくれた…無謀だったからじゃない。例え重傷を負ったとしても、俺さえ生存していれば全快できると冷静に判断したからだ」

 「…」

 「だが、一つ謝らせてくれ」

 「…何を?」


 俺は、ライナに頭を下げた。


 「俺は、無謀にも猪突して敵の前に姿を晒し、ライナの策を無にするところだった。辛い思いをさせて、すまない」

 「ドミー…」

 「これからは、俺もチーム全員の利益を考えて行動する。学びの機会を与えてくれて、ありがとう」

 「…!」


 ライナの瞳に、涙が浮かぶ。

 そのままこらえきれずに、流れ出した。


 「お、おい。泣くなよ」

 「だって…ずるいよ。あの一瞬の戦闘で、敵だけじゃなく、私が考えていたことも見抜いちゃうんだからさ…」

 「ライナ…ってミズアも!?」

 「ドミーさま。あなたに仕えることができて、ミズアは幸せです…!」


 俺が2人の涙を収めるまで、しばらくの時間を要した。



========



 「俺たちに足りないのは、つまるところ連携だな」


 2人が落ち着いてから、俺は今日の襲撃の総括を始める。


 「連携…ねえ」

 「エンハイム城の攻略の際は、うまく出来ていたと思うのですが…?」


 少し目の赤いライナとミズアは、不思議そうな顔を浮かべる。


 「いや、エンハイム城で起こった騒動を鎮める時、俺は情報収集と交渉の役割しか果たしていない。今後は俺も戦闘の役割を果たし、ミズアとライナの力を最大限引き出さねばならないだろう」

 「なるほど、確かにそうですね」

 「そう考えるとー」

 

 ライナは思ったことを正直に伝える。


 「ドミーに剣って向いてなくない?」

 「…うん。そうだよね」


 俺はクラウディアから授かったプレートアーマーと剣を装備している。

 が、プレートアーマーはそのままでいいとして、特に訓練を受けていない剣は使いこなせていないのが現状だ。

 戦闘用【スキル】を保有していないので、敵に切りかかってもあっさり返り討ちである。


 「近接戦闘はミズアがいますから、正直いなくても…ってすいません!軽率でした」

 「…いや、仰る通りです」

 

 一応「近接戦闘が苦手なライナを援護する!」という壮大な計画があったのだが、どうやら専門家に譲った方がよさそうだ。


 「うーん…そうだなあ」


 -俺のように訓練を受けていない人間もすぐに扱える。

 -【男性】の持つ体格やパワーを最大限発揮できる。

 -いざというときはライナやミズアのフォローにも回れる。

 -できれば生存確率もあげたい。


 そんな条件を満たす武器ー、


 「おお!一つだけあった!」

 俺は手をぽんと叩く。


 「アマーリエさんに会いに行くぞ!」

 

 

 





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