旧約第4章 ゴブリン500名を討伐し、辺境地帯を手中に収める
第51話 ライナ、朝帰りに女を連れ帰るドミーと遭遇する
朝を迎えた宿場町イラストリア郊外。
鬱蒼とした森が広がっているが、モンスターは生息しておらず、至って平穏そのもの。
その森の中を私はー、
「私としたことがああああああ!」
全力疾走していた。
「ドミー!死ぬんじゃないわよおおおおお!」
端的にいうならー、
寝坊である。
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前日の夜。
「お花を摘みに」といって【やどりぎ亭】の部屋を出たドミーを待っていたが、なかなか戻ってこなかった。
心配になって様子を見に行こうとしたのだが、そこに一人の客人が訪れる。
「イラート…!?」
「えへへ、来ちゃいました先輩。ちょうど任務が終わったので」
「そ、そう。実はね、今からドミーを探しに行こうと思っていてー」
「ドミーさんは…さっき見かけましたよ。少し周辺を走ってくると言ってました」
「あ、そうなんだ。確かに、最近体鍛えるのに凝ってるしね…」
「ですからー」
イラートは優しく微笑んだ。
「少し、お話しませんか?」
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「そうそう、あの時の【ナーガ】、すごい大きかったわよね~」
「先輩がいなければ、危ういところでした!流石です」
「いやいや、それほどでもないわよ。えへへ…」
というわけで、雰囲気に飲まれてついつい先輩・後輩トークに花を咲かせてしまった。
「イラートとの時間を作れ」という、ドミーの指示もあったし…
この世界では、【女性】同士で子供を作ることができる。
おそらく、イラートは私を好いている。
でも、いまはその想いに応えられない。
それに対する罪悪感もあり、ついつい話が長引いてしまった。
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周辺を走るにしても、遅すぎる。
そう感じてきたのは、私とイラートの武勇伝を5つまで語り終わった時だ。
「…やっぱり遅いわね。ごめん、少しドミーをー」
その時、私は強烈な眠気を感じ、ベッドに倒れこんでしまう。
無理もない、今日は1日中行軍だったし、マッサージ店なんてやって調子に乗ってたし…
だめだ、動けない。
「すみません。イラートもそろそろ戻ります」
「うん…」
急速に薄れゆく意識の中で、私はイラートの最後の言葉を聞いた。
「まだ、諦めませんから…」
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というわけでー、
「起きたら朝だったあああああ!ドミーはいないし、なんか爆発騒ぎ起きてるしいいいいい!」
私は、恐らく爆発騒ぎとドミーになんらかの関連があると感じ、全力疾走で向かっているのである。
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「はあ、はあ…」
爆発が起こった現場まで、もう大分近づいている。
体力がある方ではないので、息が苦しい。
その時私は、今の自分がCランク程度の実力しか持っていないことに気づく。
ドミーの【強化】を受けていないからだ。
「そんなこと、どうだっていい!」
わざと大声を出して、自分を鼓舞する。
ドミーは、私の全てなんだ。
自分が寝ている間に何かあったら、死んでも死に切れない。
「ドミー…」
私は信頼するパートナーの名前を口に出した。
するとー、
「おお!ライナ!無事だったか」
木陰からー、当のドミーが姿を現した。
怪我もなさそうだ。
「もう!心配したんだから…!!!」
ドミーが爆発騒ぎとどう関連しているか、なんてことはどうでもいい。
生きていてくれれば…
「…あの、ドミーさま。この方は?」
という感傷に浸っていた私に冷や水をかけたのはー、
白い髪をした、自分と同じ歳ぐらいの少女だった。
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「…なるほど、状況は分かったわ。今日からこのミズアって子とも行動を共にするのね」
「すいませんでした!」
「別に謝ることないじゃない。ドミーは、最善を尽くしたと思うわ」
【やどりぎ亭】。
土下座…まではしなかったけど、直立不動でお辞儀をするドミー、それを眺める私、そしてー、
「…」
ドミーの後ろに隠れて、ドキドキしている白髪の少女。
名は、メクレンベルク・フォン・ミズア。
ミズアでいいかしら。
【竜槍】を振るうAランク相当の槍使いらしいけど、今は人見知りでもじもじしている少女にすぎない。
ちなみに、私より1歳年下の14歳だそうだが、胸はこちらより大きい…なぜ?
「本当はライナとも相談したかったのだが…状況が状況でな」
「すみません!」
ミズアも一歩前に進み出る。
「お、お二人の仲を邪魔するつもりはありまひぇん!」
少し噛んだ。
「必ず役に立ちますので、どうか同行をお許しください!」
そして、ドミーのようにお辞儀をした。
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「気遣いは無用よ、ドミー。あなたは王となるんだから、腹心が1人や2人増えて当然。私にいちいち遠慮することないわ」
半分本当で、半分嘘。
正直、2人だけの旅が終わることに、少し寂しさは感じる。
でも、それを言ってはいけないのだ。
ドミーは王になろうとしてるのに、私が独占して良いわけがない。
それにー、
「…そういうわけにはいかない。ライナは、俺が最初に【断金の交わり】をかわした、最も信頼しているパートナーなんだから」
「やれやれ、急に褒められてもうれしくないわよ」
ドミーは、私が望んでいた言葉を、何も言わなくてもかけてくれるから。
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「さて!湿っぽい話はこれくらいにしましょう」
私は、おもむろに【炎魔導士のドレス】を脱ぎ始めた。
「ラ、ライナ?」
「…何をすればいいんでしょうか?」
「決まってるでしょ」
私はにっこりと笑った。
「ビク◯ビクンよ!」
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