第20話 ライナに正道を示す ※ビク◯ビクンなし
「ドミー!?あんた、こんなところで何やってるの!」
「これはジャンピング土下座と言ってな、ロザリーに仕込まれた最上級の謝罪方法だ」
「ロザリーって誰よ…そんなことより、なんで謝るの?」
俺は土下座をしながら説明する。
「すまない。俺は、今日ライナに邪道を行かせようとした」
「邪道…」
「ああ。正直、俺とライナでギルドを結成できるかどうか自信がなかった。色々考えてはいるけど、運の要素が強い。だから、ギルド会議に来たやつを【ビクスキ】で操って強制的に認めさせるとか、こっそり冒険者稼業をするとか、そんな方法を考えてたんだ」
「ドミー…」
「言っておくが、俺自身は今日、1つの策を使って邪道を行く。でも俺は元々なんの取り柄もない【男性】だし、その道を行くしかないからいいんだ。失敗したら責任を取る覚悟もある」
俺は、ここまで言い切ると顔を上げた。ライナにきちんと届いて欲しいと思ったから。
「でも、ライナはそうすべきじゃないとはっきり分かった。俺みたいな【男性】と違って、ライナはなんら恥じることをしていない立派な冒険者だから」
「…っ」
動揺して声が出ないライナを見つめながら、畳み掛ける。
「自分も苦しんでるのにいじめられていた友人を庇い、助ける必要もない俺をゴブリンから助けた。俺がムドーソに入るとき、暴虐なことはしないよう忠告してくれた。ラムス街では俺に出し得なかった知恵も出してくれた」
「…」
「今は【成長阻害の呪い】をかけられているけど、それが解ければ、俺の【ビクスキ】なくともAランククラスの偉大な魔導士になるのは疑いない。だから…」
俺は結論を述べた。
「ギルドでは何もかも正直に述べたら良い。結果はどうなっても俺は恨まない。力を示せと言われたら、俺は堂々と助けるから安心して力を奮ってくれ。力が戻るまでの期限つきだ、恥じることはない」
「そ、それで?あんたはどうするのよ?邪道を行くって言うけど、その間私は何をすれば良いわけ?」
「俺を笑っていればいい。こんなことしができない【男性】だとー、」
「ばか!!!」
「…え?」
予想外の返答に面食らう。
「ドミーは、自分で思ってるほど悪い人間じゃないわよ!過ちを犯したこともあるけど、それについてちゃんと謝罪したわ。ゴブリンに襲われたときも、ドミーが時間を稼がなかったら死んでた。野望のための力を使っても、誰かを無意味に傷つけるようなことは決してしない!私に、立派な装備や楽しい時間を与えてくれた!」
「ライナ…」
「今私が生きているのは、立っていられるのは、ドミーのおかげなの。だから…!」
いつの間にか、ライナは涙を流していた。
「私にも、少しぐらい手伝わせてよお・・・」
「俺が悪かった、だから泣かないでくれ」
「ううん、私ね、嬉しいんだよ。ドミーが私を尊重してくれて。この涙は、重くて苦いものじゃないの…」
その後もライナは、ひとしきり泣いた。
俺は抱きしめてあげたかったが、それはライナの涙を奪うことにつながる。
だから、できなかった。
==========
「大分落ち着いてきたわ、ありがとう…」
「ああ」
目立たないよう、俺たちは中産階級エリアの公園【イグヴァルドの憩い】に移動していた。
行商売りが売っていた砂糖きびのジュースを買い、2人で飲んでいる。
2杯で6ゴールド。
「あなたのいう通り、正道を行ってみるわ」
泣きはらして赤い目をしたライナが、ジュースを飲み干した。
「ああ」
「そして、あなたの邪道も助ける。ちょっと都合が良いかもしれないけど、世の中簡単には割り切れないことがたくさんあるしね」
「…ありがとう」
「でも、昨日言ったように、誰かを無闇に殺傷するようなことだけはしないでね。約束よ」
そこまで言うと、ライナは立ち上がった。
「さあ、これ以上遅れるとまずいわね。ギルド本部へ行きましょう」
「そうだな!」
「あ、でもそろそろビクンビク◯しておいた方がいいんじゃないの?」
「それについては考えがある。あと、今日ライナにお願いしたいことは…」
色々な意味で回り道をしながら、俺たちはギルド本部へと向かった。
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