第19話 俺、ジャンピング土下座する ※ビク◯ビクンなし
ムドーソ城内のギルド本部は、中産階級エリアに建設されていた。
中産階級エリアが街の中心に位置しており、有事に備えやすいためである。
また、時には血を流すこともある冒険者を、上流階級エリアには入れたくないという王や貴族の思惑もあった。
Aランクの冒険者は強力すぎて国家に害を及ぼしかねないため、ギルドではBランクが重宝されている。
Aランクの冒険者は国や街を渡り歩き、非常時のみ高給で雇用されることが多かった。
レムーハ記 都市解説より
「私がギルド【アーテーの剣】に入ったのは、2年前よ」
ライナは歩きながら状況を話したいと言ったので、【おんぼろ亭】を出ることとなった。
ラムス地区を抜け、今は中産階級エリアにいる。
中産階級だけあって行き交う人は上品だが、【ビクスキ】で支配下に置いていないので、俺は顔に布を巻いて変装した状態である。
「全員がCランクからBランクになるのを目指すギルドでね、メンバーは20人ぐらい。年長のヘカテーとエリアルがリーダー格よ」
「2人がリーダーだと揉めないのか?」
「上昇志向が強いのよその2人。最終的に、2人で表面上は仲良くするようになったわけ」
「そうか…それで、【成長阻害の呪い】をかけられた心当たりはあるか?」
「さあねえ」
ライナは心底困り果てているようだった。
「原因は…本当にわからない。いつからか成長スピードがどんどん落ちていって、それどころか退化していくのがわかった。ドミーみたいにステータスまでははっきり分からないけど、どのランクにいるのかはギルドで調べればわかる。だから、辛かった…」
街は快晴そのものなのに、ライナの表情はどんどん暗くなる。
「それで、飛び出したのか」
「いや、本当は追い出されたのよ。かっこ悪くて言えなかったけど」
初めて知る事実だった。
「ヘカテーとエリアルにか?」
「うん。私と同じように、なかなかBランクに行けない子がいてね。いつも優秀な結果を出してるのにランクだけ上がらなかった。その子もヘカテーとエリアルにいじめられてたけど、私が庇ったんだ」
「…それで逆恨みするとしたら、ただのクズだな!」
流石に、俺も口調が荒くなってしまう。
「最終的に、私は武器を突きつけられてこう言われた。ゴブリンを1人で討伐して実力を示すか、死んでギルドの役に立ちなさいとね」
「…事情はわかった。もう話さなくてもー」
「いいえ、大丈夫よ。続けさせて」
ライナは気丈にも、話すのをやめなかった。
「これはあなたには話せなかったけど、本当はあの日死ぬつもりだったの。ゴブリンに殺されたら、痛みと引き換えに苦しみや悩みが消えるんじゃないかって。そんな時、あなたと出会った」
そして、俺に向けて微笑んだ。
痛々しい笑顔だった。
「話せることは、これで全部かな…」
==========
長い沈黙が流れた。
中流階級エリアも大分歩いている。
街の人間は楽しそうで、俺たちの間に流れる重苦しい空気などお構いなしだ。
俺がやるべきことー、
ライナにしてあげられることー、
無い知恵を絞って、必死に考える。
「決めた!」
「どうしたのよ、急に」
そしてー、
「ごめんなさい!!!」
ジャンピング土下座した。
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