第21話 ライナはビク◯ビクンしながら力を示し、王はざまぁを楽しむ(前編)

レムーハ記 ムドーソ王国伝(仮称・改訂の可能性あり)より抜粋


ムドーソ王国の開祖、ムドーソ・フォン・エルムスは、後継者を決めぬまま世を去った。

当然ながら、残された家臣たちの間で後継者争いが勃発することとなる。


後継者候補は2人。


1人目が、エルムスの腹心であるチディメ。

財務に明るく、エルムスの死後は城内の金銀財宝を速やかに接収した。


2人目は、他国からの人質でありながら、その美貌をエルムスに寵愛された将軍ラカゲー。

チディメに金銀財宝を奪われたものの、地方から自らの息がかかった軍勢を呼び寄せ、徹底抗戦の構えを見せた。


2つの勢力は、決して大軍の展開に適しているとは言えないムドーソ城内で、【館の乱】と呼ばれる血みどろの市外線を繰り広げる。


やがて、この内乱の勝敗は1つの要素に託された。


それは、腐敗が進むエルムスの遺骸。


遺骸を手に入れ、次代の王として葬儀を取り仕切る者が、後継者としてふさわしいという機運が高まったのである。


またもや機先を制したチディメは、300人の決死隊を指揮し、エルムスの遺骸を守っていた中立派の貴族を惨殺した。


当然ながら、ラカゲーも大軍を率いて、遺骸の奪還を図る。


だが、チディメには切り札があった。


当代一の建築【スキル】を持つ家臣カエナオに作らせた、【守護の部屋】である…



==========



「ドミーさま、兵士アメリアが部下を参集して馳せ参じました」

「…予定通りだな。数は?」

「10人でございます」

「それはいいが、その恰好はなんだ?」


ギルド本部に入る直前で、俺はアメリアと合流した。

だが…


「はっ!これは【ジャンニ】と呼ばれる、東にある異国の戦士装束でございます」


目の部分以外を黒い布で覆い隠した、明らかに異様ないでたちである。

しかもサイズが明らかに小さく、アメリアやその部下の鍛え上げた肉体がくっきり見えた。


レムーハでは、このような奇異な行動や格好をする者を【変態】と呼んでいる。


「やれやれ…」

「ね、ねえドミー、その人たちは…?」

ライナもさすがに困り顔だ。

「今日の邪道を手伝ってもらう者だ、今は気にしなくていい」

「そ、そう…」


とりあえず後ろからついてくるようにし、ギルド本部へ入った。


何ひとつ根回しを行っていなかったためー、


「何!王が行幸する会議に今から出席を申請だと!?Cランク冒険者風情が…は、あはははははすいません入っていいですうううううう!」


入り口でひと悶着あったが【ビクスキ】で黙らせた。



==========



ギルド本部で支配下に置いた壮年の【女性】はエリザといった。

本部の施設管理を担当しているらしい。

「歳なので肩をもんでほしい」という哀愁ただよう【前提】をクリアし、俺とライナの通行権を得る。


そしてー、


「あの黒装束の【女性】たちは検査なしで入れさせろ。名簿にも記すな。余興が好きな王のゲストでも言っておけば良い…心配するな、武器の類はもっていないし、誰かに危害を加えることもない」


-【前提】を満たす際、虚偽の発言があれば否決されます。

事前にナビから聞いていた条件を満たすため、嘘偽りない命令を下す。


「で、でもー」

「背中のツボも押してやろう」

「あああ!そこ!弱いのおおおお!うひひひひひぃん!」


このように、アメリアたちを先に会場へ入らせ、俺たちとは別行動を取らせた。


そして、俺たちは名簿に記された正式なゲストとして、とある儀式に参加する。



==========



「ご、ごほん。ではまず、この【真実の口】に手を入れてください…ドミーさま」

「さまはやめてくれ」

「は、はい。ドミーよ」

「この岩に手を入れれば、俺のランクが分かるんだな?エリザ」

「そうです…」



それは、壁面に彫刻された【女性】の顔の口に右手を入れ、【ランク】を計測するというものだった。

レムーハ大陸では、これが知的種族の能力を推しはかる唯一の手段となっている。

強力すぎるAランク冒険者を国内に入れないため、ムドーソ王国随一の建築【スキル】を持つ人物カエナオが作成したものらしい。


だが、


「ドミー。ランクはC以下。以上」


詳細なステータス表示もなく、ただランクを告げるのみというお粗末なものだった。


「ライナ。ランクはC+。以上」

【ビクスキ】前だったため、ライナのランクも低い。

Aランクとはほど遠いため、王の会議に出席を許された。


俺の【ビクスキ】は…おそらく【真実の口】では探知できなかったのだろう。

正当な評価を下せば、Aランクを凌駕するはずだからだ。

コンチは自らを神と名乗っていたが、本当にそうなのかもしれない。



==========



正式に出席が許可されたため、俺とライナは広大なギルド本部会議室に入った。

冒険者、ギルド本部職員、貴族など、さまざまな人間が集まっている。


「あれは…?」

「なんでも、1000年に1度生まれる【男性】なる存在とか」

「ひえー!これは奇怪なり」

「闘技場に閉じ込めて、グリフォンと戦わせてみたいのお」


…ラムス街の連中より、多少陰口はおとなしいようだ。

聞こえないふりをし、王の到着を待つ。


数分経過しー、


「ムドーソ・フォン・エルンシュタインさま、行幸!」


ムドーソ王国の5代目国王、ムドーソ・フォン・エルンシュタインが飛んできた。


そう、飛んできた。

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