【挿絵付き】第3話 通りがかった女性冒険者にスキルを使ってビ〇ンビクン

さて、どうしようか。

コンチが去ってから、俺は途方に暮れた。

どうやら触れた女性をビクンビク〇…などという良くわからない【スキル】を得たらしいが、活用方法がいまいち分からないのである。


「俺も、あんな感じで活躍したい…」

だが、先ほどコンチによって植え付けれた【男性】の記憶が、新たな感情を呼び起こしている。


もっと活躍したい。

認められたい。

好きなことをしたい。

そして、今まで手も触れられなかった【女性】と抱き合ってみたい。


ガサガサッ…


その時、俺は少し離れた場所で物音を聞いた。

先ほどまで暗くて良くわからなかったが、改めて周囲を見回してみると、どうやら深い森の中らしい。

ロザリーの話では、確か【ゴブリンの森】に飛ばすといっていたはずだ。

人里離れた場所で出現するひ弱なゴブリンでも、俺にとっては脅威となりうる。


「…誰かいるのか?」

声を掛けながら、物音がする方に目をやる。

木立に隠れて良く見えないが、なんらかの生物がいるらしい。


足元に落ちていた小石を握りしめ、様子を伺っているとー


「そこまでよゴブリン!」

杖を握りしめた少女が、目の前に飛び出してきた。



==========



「わ、私は冒険者ライナ!魔法使いよ!町の依頼を受けて、ゴブリンを討伐に来たから覚悟しなさい!」


どうやら、ゴブリンではなく【女性】らしい。

はっきりとは分からないが、恐らくロザリーと同じ14,5歳ではないだろうか。

黒を基調とした【魔法士のドレス】に身を包んでいる。


【魔法士】ライナ

https://imgur.com/a/CjdWdyR


木でできた杖を持っており、一応の戦闘能力はあるようだ。

多少声が上ずっている所からすると、新米のC級冒険者かもしれない。


「落ち着け、俺は【ゴブリン】じゃない…一応な」

「嘘よ!私たちとは背格好が違う、ゴブリンに違いないわ」

「本当だ!」

「この世界の【女性】は上半身裸でうろついたりしないわ。あんたみたいな変態ゴブリン以外はね!」


そういえば、シャツを没収され、【シックスパック】が丸見えのままだった。

そのせいもあって、どうやら俺が【男性】であると気付いていないらしい。

【男性】自体1000年に1度の存在だから、知らない人間がいても不思議ではないか。


「なあ、ゴブリンが人の言葉を話すと思うか?」


両手を挙げて近づこうとするとー、


「来ないで!【ファイア】!」


杖を振るい、炎を放ってくる。

けん制のつもりらしく、左にそれた。

木に命中するが、それほど強力ではないようで、すぐ消えた。


「嘘じゃない!俺は【男性】だ。1000年に1度生まれる種族だ。あんたら【女性】と大きな差異はない」


この少女に罪はないが、俺は正直イライラしていた。

【男性】は、この世界では結局爪はじきものだ。

今までは、それでもいいと思っていた。

だが、先ほどの経験を得た今では違う。


-やれ。

-恐れるな。

あと、さっきから自分を唆す声が脳裏に響いて止まらない。

【ビクスキ】の影響か…?


「そ、そういえば聞いたことがあるわね。見るのは初めてだけど」

「分かってくれたか。実は色々あって【ゴブリンの森】に迷い込んだんだ。冒険者なら助けて欲しい」

「ま、【男性】って不浄な存在だと聞くけど、仕方ないわね…」


ライナは杖を降ろした。

いい機会だ。

触れた女性をビクン〇クン…長いな、【ビクスキ】でいいだろう。

不浄な存在である俺に躊躇するような世間体はない。

【ビクスキ】を使ってみよう。


「今からそっちに向かう…おわッ!」

「大丈夫!?」


ライナのもとへ向かうフリをして、わざと前のめりに倒れる。


「すまない、手を貸してくれないか」

「…分かったわ」


確か、触れればOKと言っていたはずだ。

差し出されたライナの手を、俺は右手で掴んだ。



==========



「くひいいいん!?」

どうやら効果があったらしい。

ライナが短い悲鳴を上げ、へたりと座り込む。


「ん?どうかしたか?」

何も知らないふりをして、立ち上がった。

ライナの手は軽く握り締めたままだ。 

ライナは座り込んでいるので、まるで母親に連れられるのを嫌がる駄々っ子のようである。

【女性】の手に触るのは初めてだが、柔らかく、しっとりとして気持ちがいい。

癖になりそうだ。


「いやっ…ふふふ。なにこれ…んんんんん」

ライナは、どうやら自分に降りかかったことをまだ理解してないらしい。

口を抑え、必死に笑いを抑えている。

少し震えながら俺を睨み付けるが、身動きが取れないようだ。


「ふーっ、ふっー…。あ、あんた。私に毒でもー」

「冒険者がそんなんじゃ頼りないな。俺を退治できるんだろ?」

なんとか話せるようになったライナの抗議を遮りつつ、今度は左手を首筋まで移動させる。

「あ、ははははは!ちょっと、やめて…。だめだってえええ」

先ほどよりも反応があり、今度は杖を取り落した。

俺との距離が縮まり、ドレスの隙間から、ちらりと鎖骨が見える。

「だめだってばあ…」

顔は明らかに上気しており、汗も噴き出していた。


「わ、私。どうして・・・」

座り込むのも難しかったのか、やがて倒れ込もうとする。

両手で抱え、とりあえずそのまま地面に寝かしつける。


-接触により、冒険者ライナのステータスを把握しました。ランクはC、スキルは杖から炎を放つ【ファイア】のみです。詳しく確認しますか?


その時、脳内に声が響く。

どうやら、【ビクスキ】の能力の一つらしい。


「いや、後でいい」

俺は脳内の声の提案を断った。

まだやることがあるからな。


「ぜ、絶対許さないんだから…」

ライナは、ふらつきながらも立ち上がりつつあった。

だが、こちらに背を向けた状態で、無防備な体制を晒している。


危ない危ない。

そのまま近づき、ドレスの上から脇を触ってみた。

コンチに見せられた記憶によると、【女性】の脇を触るのは【男性】にとって憧れらしい。


おお、これが…

腕とはまた違う、柔らかくて暖かい感触に感動する。


「ひゃあああああん!」

すると、これまで以上の反応がある。

悲鳴のような声を上げ、逃れようとじたばたした。


-弱点を発見しました。腋を触られると、【ビクスキ】がクリティカルヒットするようです。


脳内の声が再び響く。


「ふーん、腋を触られるのが弱点と」

「どうしてそれを…いや、だめえええええ!」


少し強めに触ると、さらに大きな声を挙げた。

全身が痙攣し始めており、明らかに様子がおかしい。

もうなすがままといった感じでぐったりしている。


「やだ、こんなの知らない…お願い、許して許してよおおお!」

懇願したかと思うとー、

「あははははは!あっ!!!…きゅうううううううううん!」


ビクン〇クン!

ひときわ大きな痙攣が、全員を駆け巡った。


そして静かになり、俺の腕の中で意識を失った。

-冒険者ライナのビク〇ビクンを確認、おめでとうございます。

これが、最初の【ビクスキ】だった。

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