第2話 追放された先でビクンビク〇スキルをゲットしました


「大丈夫かい?」


誰かの声が聞こえる。

応じたいのだが、体の節々が痛み、声が出ない状況だ。


「怪我してるのかな?じゃあこの世界のスキルで…【キュア】!」


俺のそばにいる誰かさんは、治癒スキルを唱えたようだ。

体の痛みが引き、動かせるようになる。


「あ、あんたは…?」

「僕かい?僕はね…細かい説明は省くけど、神様みたいな存在かな。名前はコンチ」


ゆったりとした純白の服装で、金色の長髪が印象的な、絶世の美人だ。

スカートから伸びるすらりとした足がなまめかしい。

しかしー、


「僕…?」

俺はコンチの一人称に違和感を抱いた。

この世界では、けがわらしい【男性】が使うとして忌み嫌われている一人称だ。


「もしやー」

「あ、気付いちゃった?」

コンチはいたずらっ子のような笑みを浮かべると、おもむろにスカートをたくし上げる。


「じゃーん!」

「なっ!」


俺は驚愕した。

コンチのお腹にも、【シックスパック】が装備されていた。

しかも、俺よりはるかにムキムキである。

これほど立派なものは、昔読んだ本でも見たことが無い。


「あなたも【男性】なんですか!?」

「そうだよ、びっくりした?」

「同族に会うのは初めてです」

「この世界では、確かそんな設定らしいね」

「【スキル】も使えるなんてすごい!」

「まあ、一応神様だし?」


俺は、コンチにひざまづいた。

わらにすがるような気分だった。


「コンチさま、お願いです。俺を助けてください。この世界に居場所がないんです」

「どうして?」


「この世界では、【男性】というだけで【女性】にさげすまれます。汚物のような目で見られ、ろくに仕事も与えられません。さっきも、パーティを追放されました。いっそのこと、【女性】に生まれ変わりたい!」


俺の嘘偽らざる感情であった。

涙が、つーっと頬から流れる。


「…そんなことないさ。【男性】だって、活躍できるよ。立派にね」

いつの間にかコンチは俺の頭に手を伸ばしていた。

そっと撫でられ、くすぐったい。


「君に、別世界の【男性】の活躍を見せてあげる」

周りが光に包まれ、何も見えなくなる。


==========


その後、俺は不思議な感覚に包まれた。

誰かの見た記憶が、自分の頭に流れ込む。

あえて例えるならそんな感覚だ。


「力強いリーダーをアメリカは欲している!」

【男性】の壮年が国家指導者として辣腕を奮っている姿が見える。


「ボルト選手、世界新記録を突破しました!」

【男性】の走者が、世界大会で輝かしい成績を残している。


「今回の科学賞受賞は、チームの支えがなければ有り得ませんでした」

【男性】の科学者が、多くの人の前で誇らしげに話している。


その後も芸術、軍事、文芸など、様々な分野で【男性】が実績を残している映像を見た。

1年や2年ではない。

1000年や2000年単位でだ。


これは、どこの世界の話なんだろう。


==========


混乱する俺の脳内に、新たな映像が映し出される。

裸で抱き合う、【男性】と【女性】だ。

【男性】が奴隷として扱われているレムーハでは、【女性】の体に触れるなどありえない光景である。


それだけではなく、2人は抱き合いー、


そこから先は、何をしているのかいまいち良くわからなかった。

しかし、【女性】は顔を上気させ、何かを叫んでいる。

俺の【シックスパック】を見たロザリーが、似たような表情をしていた気がする。

やがてー、


ビクンビ〇ン。

【女性】は2、3度はねて、動かなくなった。


「この世界はね、【男性】と【女性】の地位は対等なんだよ。

コンチが何か解説したようだが、うまくは聞こえない。

「ここからは、もう少し学習を加速させるね。まだ1000年分あるから」


その後も学習は続き、俺は【男性】が活躍している世界の情報を、ひたすら学んでいった。



==========


「君が、この世界にバランスを取り戻すんだ。この世界は、【男性】と【女性】のバランスが悪すぎるからね」

いつのまにか、コンチの学習が終わっていたようだ。

未知の情報を大量に学び、放心状態の俺の耳元でコンチがささやく。


「そのための助けとして、1つ【スキル】を授けよう」

「【スキル】・・・?」

「そう。ほら、手を出して」


言われるまま手を出すと、コンチがそっと握った。

するとー、


「おおお!?・・・」

強烈な感覚。

たとえるなら、脇腹をくすぐられたときに感じるくすぐったさを3倍にしたレベルだ。

思わず座り込み、ブルブルと震えてしまう。


「触れた【女性】をビクン〇クンさせてしまうスキルさ」

「これが、【スキル】?」

「この世界の【女性】は、この感覚に異常な幸福感を感じるんだ。君がこの手で触れた【女性】は、皆君にひざまづくようになる。この感覚を求めてね」

「そ、そんなことが?」

「できるさ。君は王になるんだよ、レムーハのね」


そう言うと、コンチは羽を広げ、去っていく。

「ま、待ってください!」

「その他にもいろいろな制約や機能とかあるけど、使っていくうちに分かるから大丈夫だよ!頑張ってね〜」


そして、あっという間に見えなくなった。

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