祖父の死を通じて、「死の始まり」を意識するようになったと語るエッセイ。
読み終わってから文字数を見て、驚きました。
約2000文字というとても短い作品なのですが、描かれている内容が濃密なために、たったそれだけの量には思えなかったのです。
とにかく描き方が丁寧です。
丁寧に書くとはなにも光景や出来事だけの話ではなくて、体験から訪れた思考や実感というものまでが細かく記述されていて、その丁寧さによって話の内容が濃密になっているのです。
光景や出来事、思考や実感、その全てをしっかり握りしめて文章にするというのは大変な仕事と思います。
このエッセイでは、作者の語る死に対する考え方が語られているのですが、その考え方に「知らずのうちに同意している」といった感覚が味わえるのもこの作品の面白さです。
丁寧に書かれた文章ですから、読んでいるうちに作者の思考がいつの間にか私たちの頭の中にするりと入ってくるんですね。
文章を読むことで作者の思考が染み込んでくる。
とても素敵な読書体験ができる作品だと感じます。