その②
「ルーファスが女の子を連れてくるなんて初めてだろ? そりゃ興味が
「っ!」
ルーファス様の背中の布地を
おろおろしていると、ルーファス様の全身から冷気のようなものが
「……ヘンリーお前、私の婚約者をここまで
「大げさだな。
「……もうっ! 全然、大げさじゃないと思うわ。この
取りなすように口を
とりあえず私、しっかりしろ! 前世でも決して社交的ではなかったけれど、いい大人だったでしょう! 挨拶くらいしないとかえって悪目立ちする!
「ぴ、ピア・ロックウェルと、申します……」
意気込みもむなしく、緊張で声が震える。情けない……。
「ちっ、名前がばれたか」
ルーファス様の舌打ち!
「ルーファス様……」
「ああ、ごめんごめん、ピア、こんな
「なんて……
エリン様はぼそりとそう
「ルーファス様! 私、ピア様とお友達になりたいです。なんでもルーファス様の言うとおりにします。ルーファス様がご不在の時はピア様を私が守ります! 何とぞお聞き届けを!」
ルーファス様はエリン様の言葉に
「私はピアのそばを離れるつもりなどない」
「お待ちください! 来年アカデミーに入られましたら、女性だけしか入れない場所や場面がおそらく出てきます。絶対に、ホワイト家の名に
私を守る? いやいや私は伯爵家とはいえ下のほう。守ってもらわなくても……待って? ホワイト家って言ったら……四侯爵家の一つじゃないのっ!
私が
「うーん……この場でスタン家に忠誠を
「ル、ルーファス様、何を?」
「ホワイト家は長きにわたり、自領の川の
「待て! ここでそれ以上話すのはやめてくれ。それに『言い当てた』というのは
エリン様は
「おーい、なんの話だ?」
ヘンリー様、私も同じ気持ちです。
「ピア、このエリン侯爵令嬢がピアと友達になりたいそうだ」
「え? こんな
「まあ! おまけに
エリン様、今度はルーファス様をドンっと押しのけて、私をふんわり両手で
「「おいっ!」」
「もちろんです。ピア様、いっぱいお話、しましょうね!」
「は、はい!」
初めて、この世界でお友達ができた。
緊張したまま視線を動かし、ルーファス様を見上げる。よろしいのでしょうか?
「はあ……まあ、よかったね、ピア」
「はいっ!」
私はできるだけ好印象を
「え、エリン様、よろしくお願いします。アカデミーではエリン様の後ろからついていきます。仲良くしてください!」
なぜかエリン様は
「うるんだ
「脅威だろう? エリン嬢、案外話がわかるな」
「おい、俺はわかってないぞ?」
ヘンリー様と私はまたもや置いてけぼりをくらった。
突然現れた二人は他の挨拶回りのため去り、私たちは列に戻る。しばらくすると、私たちの順番が回ってきた。
ルーファス様が深々と礼をされるので、私もそれにならう。
「殿下、本日はお茶会にお招きいただきありがとうございます」
「ルーファス、心にもないことを言うな。さあご令嬢、顔を上げてくれ」
私は静かに体を伸ばす。
「ふーん、あなたがルーファスの長年隠してきた婚約者か」
特別
「ピア・ロックウェルと申します。よろしくお願い致します」
ルーファス様とのシミュレーションどおり、余計なことは言わない。
「どんな
「殿下! レディに対して失礼ですわよ!」
つまらなそうに、口をへの字にする王太子。隣に立つ女性が場を取りなすように声をあげた。ああ、アメリア・キース侯爵令嬢だ。悪役令嬢らしいぱっちりとしたつり目だけれど、まだ少し幼く、ゲームで見たようなキツイ表情をしていないので、ただただ愛らしい。手入れされたプラチナブロンドは当然縦ロールだ。
「
「もう、殿下ったら……」
記憶がぶり返す。
〈マジキャロ〉のゲーム
反論することも許されず、ジッと顔を
こんなに仲睦まじいのに、あと三年で、あんな険悪になるの?
私も? 私とルーファス様も? 今これほど良好な、戦友のような関係を築けているのに、やはり
「……ア、ピア、ピア!」
ルーファス様に肩を
「あ……」
右手を額に当て、目を閉じる。こんなことではダメだ。気を引きしめるよう注意されていたのに。いつまでも私は成長しない。弱気なままだ。
「ロックウェル伯爵令嬢、顔が真っ青よ? 休まれたほうがいいわ」
アメリア様が気にかけてくださる。美しく、殿下に意見できるばかりか思いやりまであるなんて。
〈マジキャロ〉でのあなたは、プレイヤーである私の
「うん、本当に病弱なのだな。呼び立てて悪かった。ルーファス、休ませてやれ」
王太子が手の
「……失礼致します」
ルーファス様と共になんとか頭を下げた。
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