10月12日(水) JK、石をなくす

 明るくなった。簡単に言えばそうだろう。


 今まで目の前の物すらも見えない暗闇の中に居たのに、今は草原があって、その周りを森が囲っているんだと分かる。そう、見えるのだ。


 そして何より、世界がモノクロになった。

 空を見上げれば黒の中に点々と光の粒が輝き、昼間はあんなに青々と茂っていた草も白く姿を変え、目の前の少年もそれはしかり。


 目が真っ白に光っていて、見た目で言えばかなり怖かった。


「どう? 見えるようになったかな」


 そう言う少年に少しビビりながらも頷く。この少年も見えているのか、ニコッと微笑んだ。


「これは君たちの言う魔法ってやつでね。これは櫻子の言っていた暗視ゴーグルってのを参考にしてみたんだ。こんな感じ?」


 暗視ゴーグル……いやつけたことないし分からんけど! でも、こんな感じなん……?


 てか怖!! 目光ってる、どこぞのホラーですか!?


「まぁでもこれでも見にくいだろうから……ちょっと動かないでね」


「カラー化」


 その言葉と同時に、私の世界に色が戻ってくる。


 ふわっと目の前から広がっていくように草の緑が広がり、空は青く、星々はその光を強め、もう眩しいくらいだ。


「どうかな? こっちの方が見やすい?」


 そう言う少年の姿も鮮やかに浮かび上がり、その美しい目も髪も、金色に輝いている様に見えた。


「……は、はい!!」


 ぼーっとしてしまったことに気が付き、慌てて頷く。シャルルさんは……本当に綺麗な色をしてる。羨ましいくらいに。


 あまり見ない色がより鮮やかになったから、思わずジロジロと見てしまった。


「そう? それなら良かったよ」


 「次はこれを君が使えるようになるのが目標だからね」と聞き捨てならない事を言いながら、シャルルさんは先へ進む。


 え、それどういう……てか、あれ?


 そういえば、とリュックサックを見た。…………やっぱり無い。あの光る石。消えてる……どこへ? まさか、落とした?


「あやめ、私、あの石入れ忘れたっけ……?」


 あやめに聞くが、帰ってきたのはその羽根の感触だけ。


「あぁ、マショウセキのこと? あの石は眩しすぎるから僕が持ってるよ」


 ふと、前から声がした。シャルルさんはこちらを振り返り、黒い厚そうな袋を見せてくる。


「この中に入れたんだけど、言うことを忘れていたよ。ごめんね。

あと、1つ言っておくと、光るものはあまり見ないほうがいい。この魔法にかかってる間だけは、光を見ると目が馬鹿になっちゃうからね」


「さ、早く行こう」と私の所まで戻ってきながら言うシャルルさん。


 え、いつの間に……え?


 私は石をリュックサックのあみあみなポケットの中に入れた。記憶が正しければ。なら、それ取られたら流石に気がつくはずなのに……?


 困惑するが……そうだ、魔法なんてものがあるらしいこの世界、常識が通用するはずもない。てかこの人、次私ができるようになるのが目標だとかなんとか言ってなかった? マジで? 私これ使えるようになんの?


 とりあえず止まっていても始まらないと、彼の後ろについていった。

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