10月12日(水) JK、真実を知りたい

「まず、僕はシャルルという者だ。この森を抜けた先にある町で、一応薬師兼マギシみたいなことをしている。……なんて言っても分からないよね、ごめんね、順を追って説明するよ」


 ……マギシってなんだ。


 てか、町があるのか……!!


 まず、町がちゃんと存在することへの安心感がデカかった。少年の装備からして、何かしら文明があることは察していたが、近くに町がある、っていうのはなかなかに有益、というか嬉しい情報だ。


「まず、君は日本人で間違いないよね。

それならもう察してるとは思うけど、ここは君の住んでいた世界とは違う。非常に近しい……君にとっては異世界、と言える場所だよ」


 ……もう、ここまで来るとそうだよな、としか思わなかった。予想以上にダメージは無い。


 そりゃそうだ。どう考えてもここ異世界だもの。ドラゴン見つけた時点で察してたし何も言えないわ。


 それよりも、ここが異世界だとしたら、なぜこの人……シャルル……さん? が、私が日本に住んでたこととかが分かるのかが謎だ。とりあえず、聞いてみないとはじまらない……よなぁ。


 肩に乗りその体を首に預けているアヤメを撫でながら、ゴクリとつばを飲み込む。


「……えと、なんでそんなことが分かるんですか? ていうか日本語……」


「……うーん、そうだね。そりゃあそう聞くよね……。


……えーっと、なんて言えばいいのかな。昔居たんだ、君みたいな子が。君と同じで黒い髪に黄色い肌、黒い目をした子でね。ああ、この国では珍しいんだ。黒い髪も、目も。黄色い肌は……えっと、僕みたいに少数派ながらも居るけどね。


そして、君と同じ言葉を喋っていて……ここは自分の住んでいた世界とは違うと言っていた」


 私の肩がぴくっと揺れ、指をかけていたティーカップはカチャッと音をたてる。アヤメのふわふわした体が私にすり寄ってきた。


 私と同じ……ということは、その人は日本人? ということは口振りからしてこの人は異世界人で、日本語はその人から教えてもらった? 


 それにしてはペラペラだけど、でも、話し方はなんか違和感がある。流暢りゅうちょうだけど、語り口調みたいな、かっこつけ、ってわけでもなくて自然なんだけど、なんか自然じゃないみたいな……。


「その人は、今は……!?」


 帰れたのか、それとも。


 もし帰ることができたのなら、その方法が知れれば……!


 思い出さないようにしていた家族や友達がフッと脳裏をよぎる。


 私は帰りたい、帰らなくちゃいけない。きっと皆行方不明とかで探し回ってたり、心配とか迷惑とかかけてるから。


 目がカラカラに乾いていて痛いくらいだ。もう思い出しても涙すら出なかった。


「……亡くなったよ。この世界で」


 ……自然と頭は下を向いていた。


 まあ、もう、なんとなくそうなんじゃないか、とは思っていた。世界はそう簡単に事を進めてはくれない。

 金色のお茶はゆらゆらと揺れていて、首には慰めるかのようなアヤメの熱が伝わってきて、歯を噛みしめる。

 

 

「でも、君は元の世界に帰りたいよね」


 その言葉に、再度顔を上げた。


 

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