10月4日(火) JK、沐浴する

 一言で言うと、このカラスはとても有能だった。


 あれから様々な果物や木の実、しまいには芋みたいな物まで発見してくれて、リュック内はパンパン。2日は食には困らなくて済みそうだ、なんて私はウハウハである。

 多分、今までで一番良い表情をしているだろう。

 

「ありがとね、カラス……さん?」

 

 件のカラスに目を向けると、カラスはふいっと顔をそらしてツリーハウスへと向かっていく。そして、突っ立ってる私に「はよ来いや」とか言いたげに振り向いてくる。

 

 うわぁ、素っ気な……!

 表情は……読めないけど、心なしか面倒臭そうにしているように見える。私の被害妄想か?

 

 なんて、少し楽になった頭で考えながらもツリーハウスへ足を進める。

 これで食料問題は一時的に解決だ。きっと明日までは持つ。


 リュックの容量的な問題で取り切れていない木の実も沢山あるし、また明日も森に入って、食料のストックを貯めよう、そうしよう!

 

 ……食料問題が解決したとなれば、次は沐浴問題である。


 心なしか、あの時よりは気温が高い気がする。気がするだけかもしれんけど。

 でも、まぁ水がぬるくなってくれていれば問題は無いのである。……これでぬるくなってなければ素直に諦めますよ。冷たい水被りますよ。


 ツリーハウスに登る前に小川に寄る。そして、水に触れる。……あ、冷た!


 私は察して、なんともいえない顔をした。

 多分はたから見たらチベットスナギツネみたいな顔になってると思う。


 …………素直に諦めて、冷たい水を被るしかなさそうだ。


 寒かったら、焚き火で温まろ。まだ火はついてるみたいだし……。


 本当にあの火はよく持っていると思う。それにやっぱりあんまり焦げてないよな……? 


 ……まぁ、そういうもんだ、って認識しとこ……。


 もう考えるのは無駄だって学んだのだ。とにかく今は服と、タオルになりそうなものがあるならそれを持ってこよ。

 

 ……で、そうだよな、制服とか洗ったほうがいいよな……?

 洗剤とかはないけど、汗臭いし……。


 カラスが私が着いてきていないことに気づいたからか、私の視線の先に入ってその真っ黒な目でじっと見つめてくる。


 あ、はい、今行きます。


 ツリーハウスへのぼる途中も考える。


 ……そういえば、昔の人って尿で洗濯物洗ってなかったっけ……? さ、さすがにせんからな!? 

 

 ……じゃあ何で洗える? オレンジの皮とかでお皿の汚れとかはとれるってのは知ってるけど、洗濯物でも応用できるかな……? ……そういえば、オレンジっぽい実も持って帰ってきたっけ? 

 ……試してみる価値はあるな。

 

 









――――とりあえず、衣服とタオル代わりになりそうな布、例のオレンジっぽい木の実をリュックへつめこんで小川まで来た。

 

 …………やるかぁ。


 人目がないとはいえ、外で服を脱ぐのは恥ずかしい。しかも素っ裸。だが、仕方ないだろう。

 このまま汗臭い状態で居るのも気持ち悪いし……。


 ……ネクタイを解き、スカートを脱ぎ、ワイシャツのボタンを外していく。……な、なんだろ、いけないことしてる気分だ。ち、違う! これは清潔のため必要なことだから! 生きていくためだから! 


 そう自分に言い訳をしながら、下着とかも全部脱ぐ。髪ゴムも外して手首につける。

 

 なぜかずっと私の後ろを着いてくるカラスの目が、心なしか冷たい気がした。やめて、そんな目で見んといて! 傷つくから!

 

 意識を別のところに移そうと、川に手をつける、アッやっぱ冷て! 


 これを被るのはやっぱり覚悟がいる。……とにかく足から順番に上に上げてこう。……いや、もういっそのこと頭から……? あ、そもそも無理か。桶とかないし。


 ぽちゃっと足を川に入れる。うっ、冷て。

 

 この川の水深は私の膝まで。膝までつけるが、あ~!! 冷たぁ!! 

 

 膝まであるということは、浸かることはできるわけだが……。ゆ、勇気がねぇよぉ……! 暖かいお風呂に入りたいよぉ!!


 叶わぬ願いである。


 水風呂のように、もう浸かっちゃおうかな!?

 ちょっと冷たいプール位の温度だしいけるかな!? 学校のプールとかめっちゃ寒くても浸からせられたけど、私別に風邪引かなかったし!


 ……あー! もうやっちゃえ! 


 私は思いきって浸かっちゃおうと足、お尻、お腹……と川の中に入っていった。

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