10月4日(火) JK、森を探索する

 パチャパチャッ

 手で川の水をかき混ぜる。やっぱりひんやり冷たい。これを頭からかぶるのは少し勇気がいんなぁ……!

 

 私は先程ゲットした服をリュックにつっこみ、沐浴の準備をしようとしていた。と、いっても、沐浴ってただ水浴びるだけだった気がする。詳しくは知らん!

 

 水被るだけだったら、髪とかベトベトしたまんまかもしれないけど、しないよりはマシだろう。が……ちょっと冷たすぎやしませんか!?

 

 ここの川の水は割とひんやりしてる。温泉の冷水プールとかよりはマシにしても冷たい。かなり冷たい。


 ……どうしよっかな!? 今入る!? それとも昼に入る!?


 確か、昼の1時2時ぐらいが一番気温が高かった気がする。……この世界が地球と条件が同じだった場合だけど……。


 この世界には太陽がある。それは確認した。だけど、根本的にこの世界は地球なのか? パラレルワールド的なものだったらそうだろうけど、もしかしたら全く別の星とかそんな可能性も……うん、考えても答えは出んな。私そんな星に詳しくないし。


 ……もうちょっと温まるのを待とっかな。あくまで可能性だが、信じる価値はある。この冷水をかぶる勇気はない! 風邪ひきそうだ。


 ……これからしばらくサバイバル生活をするとしたら、風邪すらも致命傷になるだろう。魚とか獲らんと生きていかれへんし、ここには薬もない。細心の注意を払わんとあかん。


 んー、昼間で待つなら、お昼ご飯になりそうなものを探しに先にこの森を探索することにしよう。そう、果物とか木の実とか縄文人スタイルで!


 ……それなら、持っていくものはナイフとレジ袋とかかな?

 スマホも一応持っていこう。で、服は置いてこう。

 

 ナイフはもしもの時のためにすぐ出せる場所のほうがいいよね? 鉱石ナイフは刃がむき出しだから手に持ってたほうがいいはず。

 リュックに入れてリュック切れたら私泣く。

 

 ……そうだよな、よく考えたらドラゴン居るんだよな、この森。ヤバい奴が森の中に居るかもしれんもんな。……本当に注意しとかんと。


 私に現在レベルをつけるとしたら1……いや、マイナス値かもしれん。モンスターに出会ったら確実に死ぬ。スライムですら危ないレベルだ。

 

 ……だって、現代社会でぬくぬく育ったJKだもの。そんな戦闘スキルとか……無い。


 ……うん、気をつけよう。


 何かに出会ったら即退散、もしもの時のために警戒を怠らないこと、そう自分に言い聞かせ、私は準備をするためにツリーハウスへと向かった。


 そういえば、とまた焚き火の方を見るが……良かった。まだ燃えてる。

 

 ……やっぱり、木は全然焦げてないように見える。なんでだろ……? ……もしかしたらやっぱり、この世界の常識は私の常識とは違うのかもしれない。


 ……まぁ、そうか。あんなデカいであろうドラゴンが空飛んでるんだもんな、重力多分無視してんだもんな。

 なんて、無理矢理自分を納得させて、ツリーハウスへのはしごを登る。


 …………考えるだけ無駄なんだよな。答えは出ないんだから。








――――鉱石ナイフは手に持って、折りたたみナイフは胸ポケットの中。レジ袋とかはリュックに入れたし、準備は万端のはず。

 忘れ物……ないよね? ……うん、大丈夫。全部入れた。


 私は、恐る恐る森の中へ、足を踏み入れた。


 ……やっぱり割と木が茂ってる。あの大樹の周りだけ開けてるけど、なんでなんだろうな? 

 木の隙間からこぼれる木漏れ日を浴びながら足を進める。……とにかく、この大樹の周りの部分をまずは周ろう。


 草や木をよおーく観察しながら歩く。……ここは広葉樹がいっぱいあるなぁ。たまにグニャグニャした独特な木とかが生えてるけどだいたいがよく見る感じの木だ。

 草は……かなり不思議な見た目のが多いけど。


 あの金の花粉の花とか……。


 本当に、金色だ……。光に当たってキラキラしてる。


 な、なんか凄いなぁ……。


 気になってその花の雄しべを触ると、手にはやっぱり金色の粉がついた。ラメみたいだ。

 

 ……じゃなくて、お昼ご飯を探さないと!


 色々な植物を興味津々で眺めたり、突然出てきた変な虫に驚いたりしながら少し歩いていると、いい匂いがした。果物っぽいフルーティな匂い。


 これは、食べれるものの予感……!?


 甘い匂いに、期待が高まる。さっきの魚はビミョーな味だったけど、これはかなり美味しいものなのでは……!?


 鼻を頼りにその果物のある場所を探す。……あった!

 

 木にプチプチしてそうな赤い実が、くっつくようにして実っていた。逆ハートみたいな個性的な形だ。

 

 背伸びをしてなっている枝をつかむ。そして、鉱石ナイフをなるべく優しく近くに投げて、空いた手でその実をもいだ。


 ……うん、やっぱりこの実だ!


 美味しそう……!!


 匂いを嗅いで、かじろうとすると、


「イテッ……!?」


 …………何かに、手をはたかれた。

 

 




 



 

 

 

 

 

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