第19話 小さく大きなすれ違い

 陸斗と愛利が腕組んで歩いてる後ろで、友徳と美海が隠れてヒソヒソと話している一方で

「ったく……兄貴は後ろでごちゃごちゃと何してんだか。しかも美海先輩と一緒とかどういうこと……?」

「ん?どうかしたの愛利ちゃん?」

 どうやら愛利は2人の存在に気付いていたようであった。

 しかし陸斗は後ろの方を気にする様子も無くジーッと愛利を見つめていたことから、後方の2人には気付いていないようだった。

 それをなんとなく感じとった愛利は

「あっ、いや……なんでもないですよ?」

 そう言って、後ろにいる友徳と美海を陸斗に気づかれないようにした。

 不自然のないように、すぐに陸斗の方をまっすぐ見て。


 すると陸斗はと言うと

「そう?なんか後ろ気にしてるようだったけど、何かあったのかなぁって」

 と、1度は後方を気にし始めたのだが。

「ちょっと髪の毛になんか引っかかってる気がしただけですから」

「えっ、大丈夫?」

「大丈夫ですよ。もう取れましたから」

「そう?なら良かった」

 真面目故に、上手く愛利にかわされるのだった。

 真面目なのが陸斗が好かれる理由だが、人を疑わないほどの人柄は時に今の愛利のように、簡単に誤魔化されてしまうのである。

 もちろん、愛利は悪意を持って陸斗の人柄の隙をついた訳では無いとは思うが……。

「はい!」

 そんな愛利は2人の存在に気づかれなかった事に安堵したからか、元気よく、何かを吹き飛ばすかのような勢いで陸斗に笑顔で返事をした。

 そんな様子を陸斗は優しく微笑みながら眺めていた。



「それで、これからどうする?愛利ちゃんは見たい場所でもある?」

 ショッピングモールに行きたいと言いだしたのは、愛利の方である。

 その為か、陸斗は何か欲しいものでもあるのだろうと考え愛利に問いかけた。


「そうですね……ちょっと新しいアクセ欲しいんですよね」

 そう言って愛利は手首を気にしながらそんなことを言う。恐らくはブレスレットが欲しいのだろう。

「それじゃあ、それ探しに行こうか。確か、3階にアクセサリー売ってる店が多いって前琴里ちゃん言ってたし」

 陸斗は愛利の要望に合うような場所をすぐさま提示する。

 琴里とのデートで得た情報なのだろうが、すぐさま言えるということはかなりの回数来ていたのだろう。


 が、しかし愛利にとってそんなことは今は重要ではなかったようで、

「えっ、あの……鷹峰先輩はどこか見たいところ無いんですか?例えば、本屋とか」

 あまりにもあっさりと陸斗が次の行き先を決めた事に不安を覚えたようだった。

「俺はそう言うのはいいんだ。やっぱりまずは愛利ちゃんに楽しんでもらわないとね」

「でも、私は鷹峰先輩と一緒に楽しみたいんです!」

 愛利としては陸斗の見たいところも回りつつ、ショッピングモールデートを楽しみたいのだろう。

 しかし、陸斗はそうでもなく

「今のままでも充分楽しんでるから大丈夫だよ、心配しなくても」

 あくまで今は愛利の為に、と言った考えのようだ。

 その言葉で愛利はこれ以上追求するのを止めた。

「そう、ですか」

 気持ちを押し殺したかのように、か細く返事をする愛利。

 その反面

「というわけで、3階行こうか」

 陸斗はどこか楽しそうに愛利の腕を軽く引っ張るのだった。




 そんな様子をとある少女が、友徳や美海よりもさらに遠くから見ていたのに誰も気づいていない。

「あれ、りっくんだよね?それに……愛利ちゃんに奥にいるのは、西沢くんに美海さん……?」

 そしてその少女は大量の包帯が入ったビニール袋を持っていたのであった……。

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