第18話 兄と姉の会合
「あぁ、もうもどかしい……!
陸斗と愛利の様子を遠目から眺めていた
とは言え、彼なりに2人から適度に距離を取っているのでそこまで心配ないのかもしれないが。
と、そんな時だった。
「うんうん、これぞ青春って感じよね。見てるこっちがドキドキしちゃうわ」
「そうですよね!……ん?」
「どうかしたの、友徳くん?」
「……
気づけば、いつの間にか友徳の隣には陸斗の姉である
あまりにも自然に話しかけられたからか、友徳は呆然としていた。
普通は隣に人がそれなりの時間いたら気になるものなのだが、それに気づかないくらい友徳は陸斗と愛利の様子に夢中だったのだろう。
特に赤く長い髪の美人が気にならないくらいに……。
そして、そんな美海はと言うと友徳が反射的に聞いてきた質問に答える。
「いつからと言われたら、そうね。陸斗が愛利ちゃんと一緒にこのショッピングモールに入ってきた時からかなぁ〜」
「つまりはほぼずーっと隠れて2人を見てたわけですね」
ニコリと答えた美海に友徳は大きくため息をつく。
まさかの陸斗を悩ませている張本人がモールでの陸斗と愛利のやり取りを把握しているということなのだから。
「隠れて見てたなんて人聞きの悪い。私は弟の恋愛事に興味津々なだけよ。と言うより友徳くんだって隠れて見てたじゃない」
「俺はその、2人にハッパをかけたからその責任をですね……!」
淡々と笑顔を崩さずに友徳に顔を近づける美海。
そしてタジタジになりながらも美海に食いつく友徳。
「ふぅん……?」
友徳が食いついてきたことに感心したのか、美海は少しだけ目を見開いた。陸斗の親友だからと、陸斗と同じく引き下がりやすいのかと、思っていたのだろうか。
とは言え、美海の今の反応を見た友徳はいい機会だと思ったのだろう。
「それにですよ?弟であるリクの恋路を邪魔した美海先輩がそれを言いますか?弟の恋愛事に興味津々だ、なんてことを」
と友徳は美海に少し攻めた質問をするのだった。
だがそれでも美海は変わらず笑顔を崩さなかった。
「あら知ってたのね。……って、さっき陸斗が友徳くんの家に行くって言った時点で察しはついてたんだけどね」
どうやら彼女としては想定内の質問だったようだ。
友徳からの質問が想定内とは、一体どんな考えをしているのか気になるところである。
そんな中、友徳が口を重々しく開く。
「……本当は明日聞こうと思ってた事なんですけど、いい機会なんで1つ聞いていいですか?」
本来は今日するべきではない話を今、この場でするつもりらしい友徳。
その物々しい雰囲気を美海が感じとれないはずが無いのだが、
「いいわよ?あっ、でも手短にね?陸斗を見失っちゃうから」
それでも美海は
それに乗じるように
「俺も愛利のことが心配なんで、すぐ終わらせますよ」
友徳も動じてない風な態度をとる。
のだけれど、美海は本当に動じてないのか
「その言い方だと陸斗の事は気にしてないように聞こえるけど?」
友徳の発したなんてことない言葉に反応を示す。
「そういう訳じゃないですよ。ただ、やっぱ何かとやらかす愛利の方が気になるだけですよ」
「つまりはシスコンなわけね!」
「そういうのじゃないですよ!」
対象は変わっても美海にとっては陸斗も友徳も、同じからかいがいのある年下の男子なのか。
そう思われた時だった。
「違うの?てっきり私と同類かと思ったんだけど」
「…………同類って?」
絶えず笑みを浮かべていた美海が、突然真面目な顔つきになり、“ 同類かと思ってた”と聞いてきたことで、友徳は驚きを隠せなかった。
目を上下左右へとキョロキョロさせ、明らかに動揺しているのが目に見えてわかった。
それほどまでに衝撃だったのだろう。
何故なら……
「私、こう見えて陸斗の事とっても好きなのよ?」
驚くべきことに美海がブラコンかもしれなかったからだ。
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