第17話 恋は盲目、それ故に罪深い
「おっでかけ♪おっでかっけ〜ふっふ〜♪」
兄である
そんな様子をすぐ真横で見ていた陸斗は愛利に訊ねる。
「愛利ちゃん楽しそうだね。そんなに出かけるの好きなの?」
そんな陸斗からの質問に愛利は
「うーん、それだとちょっと語弊がありますね」
陸斗からの次の言葉を待っているかのような言い方で、答える笑顔の愛利。
そして
「そうなの?」
そんな愛利の罠にまんまと引っかかる陸斗なのであった。
恋は盲目とは言うが、もしかしたら失恋も盲目にさせるのかも知れない。
長年恋してきた幼馴染の琴里と別れ、その幼馴染を姉の
だからこそ、
「先輩と2人っきりでお出かけしてるから、ですよ!」
琴里と陸斗が別れたことを知らない愛利に、こんなことを言わせる隙を作ってしまうのである。
隣にいる女の子が楽しそうな理由が『 あなたと一緒だから』と言われて、程度の具合は分からないにしても好意を持たれていることは分かるわけで
「あっ……そっ、そういうもんなんだ……」
流石の陸斗も気づいたようで、少し動揺していた。
さしずめ、琴里以外からはハッキリと好意を伝えられたことがないからか、どうも照れているようだった。
それを知ってか知らずか
「そういうもんなんです!彼女さんもきっとそうだと思いますよ〜」
愛利はずいっと体を詰め寄る。さりげなく琴里を立てると言う、できる女をアピールしつつ、だ。
愛利からは美海とは違い、陸斗と琴里を引き離す意図は特に見られない。
とは言え、
「やっぱり誰かと出かけるのが楽しいんだね」
「好きな人と、だからですよ、先輩」
陸斗を狙わない、という事にはならないようだった。
「そう……なの?」
突然された告白に、またもや動揺する陸斗。
恋愛自体がもしかしたら不慣れなのかもしれないが、こうも何度も動揺していては愛利の思う壷な気もするが、こればっかりは慣れだろうから今言っても仕方のないことかもしれない。
……だからと言って愛利がアプローチを控えるとは思えないが。
「それと、くれぐれも気をつけてくださいね?私だからよかったものの、他の女の子にさっきの言ったら暴動が起こるかも知れませんよ?」
つい先程陸斗が言った『 誰かと出かけるのが楽しいんだね』と言った言葉に引っ掛かりを持った愛利が陸斗に釘差しをする。
「暴動はちょっと困るけど、そんなに気になるものなの?」
何で、と言った疑問点が残る陸斗はその気持ちそのままを言葉に出す。
それを聞いた愛利は
「そりゃそうですよ!気になる男の子と以外では2人っきりでお出かけなんてしませんよ!」
と、興奮気味に気持ちを全面に出す。
ほぼ告白である。いくら琴里に遠慮してるとは言え傍から見たら告白以外の何物でもないのである。
「……まぁ、私は兄貴と出かける時ありますけどそれは家族なんで例外です」
いくら、誤魔化そうとしてもそればっかりは変わらない。
愛利の気持ちは陸斗に届く……はずだった。
「えっと……つまりどういうこと?」
「え……っ?」
「なんで俺なの?」
どうやら陸斗は愛利の気持ちに一切気づいていなかったようだった。
今まで、気づいた時から琴里一筋だった陸斗は、恐らく人からの好意に本気の本気で鈍いようだ。
そのことにようやく気づいた愛利は
「マジですか……先輩がまさかそこまでだったとは……」
思わず絶句する。
そして
「…………愛利、ドンマイだ」
こっそりと後をついてきていた友徳も絶句するのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます