第16話 自分の意見、正面からごり押すか?横からごり押すか?

「それじゃあ鷹峰先輩、出かけましょうか」

「う、うん。そうだね」

 陸斗は友徳に言われるがまま、愛利と出かけることになったようで、愛利はとても上機嫌に陸斗に呼びかける。

 しかし陸斗はその事態を未だ呑み込めていないのか、見るからに緊張しているのがわかった。

 両手両足が同時に出して歩いているのがそれを物語っていた。


 そんな先行き怪しい陸斗を見た友徳は少しでも負担を減らそうと愛利に釘を指すことにした。

「愛利、分かってるだろうけどリクに迷惑かけるなよ?」

 これで少しは愛利も大人しくなるだろう、友徳はそう思って言ったのだろうが

「兄貴に言われなくたってそんなことわかってるわよ!私は兄貴ほど馬鹿じゃないもーん!」

 むしろ余計な事だったのかもしれない。

 それでも友徳としては言わずにはいられなかったのだろう。


 だがまぁ、

「せっかくリクとの2人っきりになれる機会作ってやったのに、そんなこと言われるとはなぁ……!」

「あっ、やば……っ!」

 愛利も愛利で一言余計であった。


 どこかしら兄妹で似ているところがやはりあるのだろう。仲は決して良いとは言えないだろうがそれでも、今のやり取りが微笑ましい兄妹喧嘩にも見えなくもなかった。



「ささ、先輩!邪魔者がこれ以上口うるさく注意する前に早く行きましょー」

 性懲りも無く友徳に対して悪態をつく愛利。

 その時だった。

「それはいいんだけど、愛利ちゃん、1ついいかな」

「はい?どうかしましたか?出かけないんですか?」

 愛利が玄関のドアを開け今まさに出かけようとした時だった。

 陸斗が突然愛利に、自身の腕を眺めながら問いかけるのだった。

「いやさ、出かけるのはいいんだけど。……なんで腕絡ませてくるの?」

 陸斗の腕を離さないようにガッチリと掴む彼女の腕も気にしながら。


 すると愛利は何食わぬ顔で答えを返す。

「はぐれちゃったら大変じゃないですか」

「まだ住宅街だからそんな心配ないだけどなぁ」

 そう、まだ家なのだ。

 人混みがある駅前やショッピングモールなどならまだしも、まだ家なのである。

 どう考えても不自然である。

 ましてや、恋人同士でもないのに。


 そんな中愛利は力強くこういうのだった。

「何が起きるのか分からないのが人生ですよ!」

「それは……確かに、そうだけど」

 何を根拠に言っているのかは分からないが、自信に満ちた口調や表情で訴える彼女の気迫に圧されてなのか、狼狽える陸斗。

 その様子を感じ取った愛利は、トドメと言わんばかりに

「つまり!これは万が一の為の対策って訳です!」

 と言い切るのだった。


 そんな強引とも思えるむちゃくちゃな言い分に、陸斗はと言うと

「……分かったよ。もう特に言わないから」

 疲労困憊な顔で愛利から腕を組まれるのを認めるのだった。

「やったー!」

「ちょ、愛利ちゃん……!」

 見事、陸斗の腕を組む権利を勝ち取った愛利は先程まで以上に体を密着させるのだった。

 そして困惑し顔を赤面させる陸斗を見て、顔を綻ばせる愛利であった。


 そんな様子を黙って見守っていた友徳だったが

「……愛利に時間作ってやったの失敗だったかなぁ、これ」

 先行きが怪しくなり不安になったそうな。


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