第15話 以心伝心、ならず

「とりあえず、アレだ。先輩に探りを入れないことにはどうしようもないわ」


 悩みに悩んだ結果、友徳は参ったと言った具合に眉を顰めながら言葉を発した。

「って言っても、どうするんだ?多分探り入れても返り討ちに合うだろうし」

 どうしたもんかと腕を組みいよいよピンチな陸斗。

 だが、友徳としてはまだ策が無くなった訳ではなく

「そりゃまぁ、家で探り入れても意味無いわな」

 と、陸斗を指さす。


 決まった、と思ったのか懇親のドヤ顔をする友徳、だったのだが……

「???」

 いまいちピンと来ていない陸斗。


 恐らく心理戦なんてものはこの少年には向かないだろう。

 それほどまでに言葉の裏を取るのが絶望的に下手である。

 だが、裏を返せばそれだけ裏表が無い性格という訳でもある為

「ははは……流石、リクだわ。そういう所嫌いじゃない!」

 こうして困った時に相談出来る親友とめぐりあえることが出来たのかもしれない。



「まぁ、ちょっと俺に任せとけって。リクはとりあえず今日はいつも通り……って言うのは無理にしても平常心で接してくれればいいから」

 気を取り直して友徳は陸斗にざっくりと説明する。

「友徳が言うなら、そうするけど。琴里ちゃんはどうするのさ」

「同じだよ。あくまでいつものお前らしく振る舞えばいい」

 陸斗は分かっているのか、分かっていないのか、なんとも神妙な面持ちである。

 陸斗にとっては、今はまで琴里は恋人で美海は時々ちょっかいかけてくる姉だったのが、急変したのだから。


 自分らしく振る舞え、と言われても困惑するのは仕方の無いことだ。

「うーん、なんか難しそうな気もするけど」

「なんとかなるって。そう難しく考えるな」

「まぁ、分かったよ」

 それでも親友からのアドバイスなのだからと、提案を受け入れようとする。


 そんな悩める陸斗を少しでも安らげようとしてなのか、友徳が突然こんなことを提案しだしたのだった。

「というわけで、今からリクに気分転換に愛利とお出かけしてもらいまーす!」

「……はい?」



 益々困惑の色を見せる陸斗に、友徳はニコニコとにじりよるのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る