第14話 なんてことない事情確認と親友の呟き

「んで、なんだっけ?昨日雛形とリクが別れて、そんで持ってその櫛形くしがた美海みう先輩が朝起きたら喘がせていたと」

「うん、ざっくり言えばそう」

 ようやっとの思いで妹の愛利あいりを追い出すことに成功した友徳とものりは、一呼吸置いてから事情整理しながら質問すると、それに返答する形で陸斗りくとは相槌を打った。


「いやさ……うん……どういう状況?何が起きたらそうなるんだ?」

「それは俺が聞きたいよ……」

 両者悩む。

 普段生活している中では起こりえない状況なのだから、悩んで仕方ない。むしろ悩まない方がおかしいとまで言える。

「とりあえず、かなり聞き辛いんだが……本当に櫛形とリク別れちまったのか?とても信じられないんだが」

 と、申し訳なさそうに恐る恐ると事実確認をする友徳。

 友徳がただの興味本位で聞くような人ではないと分かっているからか、陸斗は親友の真正面を見ながら答えることにした。

「俺も信じたくないんだけど、本当だよ。昨日、琴里ちゃんと駅前で別れた後に近くのトイレで大泣きしたし」

「……すまん、辛いこと思い出させたな」

 悪気は無く、興味本位で聞いた訳では無いにしろ、親友の口から“大泣きした”なんて言葉が出てしまえば、反射的に謝ってしまうだろう。

 友徳も例外じゃなかった。


 そして、ポン……と肩を優しく叩かれたことで陸斗は、強がりがバレてると思ったらしく

「大丈夫……、とは言えないけど何とか立ち直るから心配しないでくれ」

 と少し申し訳なさそうな顔を見せる。

「何かあったら言ってくれな?」

「……あぁ」

 陸斗が力は無くとも上昇志向のありそうな声で返事をすると友徳は満足気に、肩から手を離す。



 そして、一息つくと再び質問をする友徳。

「んで、次なんだけどさ。櫛形と美海先輩ってどういう関係なんだ?」

「どういう関係って、そりゃ俺と同じで幼馴染だけど」

 何を今更、と言った顔をする陸斗。

 だが、友徳としては予想していた答えとは違ったらしく

「あぁいや、言葉を間違えた。……端的に言えば、何か特別な関係でもあるのかってこと」

 再度言葉を変え質問をした。

 それでようやく質問の真意を理解したのか、陸斗は言い淀む。


 答えを知らない訳では無い。知っているからこそ、陸斗は言い淀んでいるのだ。

 その様子に何かを察した友徳だったが、陸斗が答えを出すまで黙って見守るようだった。


 そしてようやく、覚悟が決まったのだろうか、陸斗が口を開く。

「……恋人関係、らしい」

 その答えを聞きさほど驚く様子を見せない友徳。

「なんつーか、その……色々問題山積みだな」

 恐らく、何かしら予想をしていたのだろうが、それにしても落ち着きすぎている。

 けれど、その様子に特に疑問を抱くことなく

「だよなぁ……どうしよう」

 友徳の言葉に便乗し、悩み始める陸斗。


 言葉の裏や感情を読み取るのが下手とは言え、ここまで気づかないとなるともはや才能とも言えてしまう。

 そんな陸斗の傍らで友徳はボソリと呟く。



「てか、絶対他のやつ知ったら卒倒するだろうな。生徒会長が自分の弟の恋人を奪ったなんて知ったら」




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