第9話 親愛なる友より
〜〜♪〜〜♪
カーテン越しに朝日が差し込む部屋に、アップテンポ調の曲が小さな機械から流れ始める。
その音に気づいた部屋の主が音源である薄い板のような機械に手をかけると
「あー、もしもし?リクどした、こんな早い時間に」
そのまま不機嫌そうに電話に出た。
『 早いか?今もう10時だぞ?』
「いや、早いだろ。今日は日曜だぞ?12時までは寝るだろ?」
親友であるリクこと
『 ……夜更かしは程々にな、
「へーい」
返事はしたものの、金髪少年改め
金髪に染めてはいるが、友徳は決して不良という訳では無い。
ざっくり言ってしまえば、高校デビューに際して髪を黒から金に染めたのだそう。
“ 高校デビューって言ったらやっぱ金髪だろ!!”という理由だけで。
だが、馬鹿正直という点に関しては真面目な陸斗とは気があったのだろう。2人はすぐさま仲良くなり、現にこうして付き合いのある、親友同士となったようだ。
「んで、どうしたんだよ。リクが自分から電話するなんて珍しいじゃんかよ」
段々と目が覚めてきたからなのか、口調がハキハキとするようになった。
先程の友徳の不機嫌そうな口調は、寝起きだったからだろう。
『 それがだな、ちょっと長くなるんだけどいいか?』
「できる限り短めで頼む。寝起きで頭働かない」
『 あー、分かった。それじゃあ簡単に言うとだな』
友徳が寝起き弱いのを知っているのか、電話相手である陸斗は噛み砕いて説明しようと考え出す。
「おう」
どこか、元気のなさそうな親友の声に違和感を覚えながらも、気の
やがて、考えをまとめ終わったのか、少しばかりのため息の後に陸斗が言葉を発した。
『 昨日別れたはずの琴里ちゃんが、今朝俺ん家のリビングで姉貴に喘がされてた』
陸斗が言い終わると、僅かばかりの沈黙が流れた。
「……えっと、ごめん。もうちょいわかりやすく頼むわ。ちょっと意味不明な言葉があった気がする」
電話越しで告げられた親友からの出来事に、友徳は理解不能なようだった。
とはいえ、理解できるものもあった為
「まず、さ……。リクと
ひとまずはそこから理解していこうと友徳は試みる。
『 マジだよ。昨日のデートの終わり際に、突然ね』
聞かれた事に対して、端的に答える陸斗。
一夜明けて、気持ちが少しは落ち着いたのか、陸斗はあまり悲しんでいる様子を声に出さない。
親友に心配させまいとして気持ちを押し殺しての可能性もあったが、どちらにせよ心が強くないとできないだろう。
そんな陸斗の実情を察してなのか、
「あー、マジなのね……。一体何があったのか気になるがそれに関しては明日じっくり聞かせてもらうとして」
友徳は深く聞くことはしなかった。
が、それは陸斗と琴里が別れたことに対してのみである。
「んで、もう一つの方だよ問題は。昨日別れたはずの櫛形がリクん家のリビングで喘いでたって何事だよ。しかも、
流石に親友の彼女だった同級生を親友の姉が喘がせていた、という話に関しては到底ありえない、という反応を友徳は示す。
その親友からの反応に陸斗は
『 姉貴は学校だと素を隠してるからなぁ……』
普段の姉と、学校での姉を交互に思い浮かべながらポツリと呟く。
そして間髪入れずに
『 とりあえず今から友徳の家に行ってもいいか?家には居づらい』
と友徳に聞く。
その陸斗からの提示に友徳は快く承諾した。
そしてまもなくして、通話は切られた。
「とりあえずここら辺のマンガとゲーム、片付けるか」
そう言って自分のスマホをベットに投げ置くと、友徳は床に散らかるものを片付け始めた友徳は、パソコンの置かれている机のすぐ真下に転がっていたゲームの箱を手に取る。
「元カノが姉に襲われるとかどこのエロゲーだよ……ったく、リクが羨ましいわ」
そう言って、友徳は今から来る親友に見つからないように、本棚の奥へとその箱を押し込むのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます