第8話 朝から響き渡る、彼女の声
「えっと……何これ……」
休日にしては珍しく早起きした陸斗が目にしたのは驚くべき光景だった。
「
元カノである櫛形
しかし、リビングにいる琴里と美海の2人は陸斗が起きてきた事に気づいていないのか
「とか言って、実は結構気持ちいいんでしょ?ほれほれぇー」
「あぁっ、そこはダメ気持ちよすぎちゃいますから……!」
先程までのやり取りを続ける。
「何してるんだ……?」
2人と顔を合わせるのが気まずいのか、思わず影に隠れた陸斗だったが、2人が何をしているのか気になる様子。
そーーっと、2人に見つからないよう覗き見しようとするが、
「くそっ、ギリギリ見えない」
角度が悪く陸斗は美海が琴里に何をしているのかを見ることは出来ないようだった。
自分のすぐ側で何が行われているのか分からない事で陸斗がモヤモヤしていると、
「ほらほら、もっとスッキリしちゃいなさい。こういう時しか、できないでしょ?」
「それは……そうですけ、どっ!?」
「おっ、いい声。ここが結構効いてるのかな?」
美海が琴里に何かしたのか、琴里の声が先程よりも大きく、そして艶っぽくなりリビング中に響き渡る。
「美海さん、もう限界です……!もう十分ですから!」
琴里は首を大きく横に振りながら懇願する。
その琴里の仕草に、彼女の“ 何か”の琴線に触れたのだろうか
「そう?それじゃあ、最後に……こうっ!!」
最後の一押しとして力を込め、琴里に落とし込む美海。
その直後
「────っ!!」
琴里は言葉にならない声を出し、そしてそのまま意識を失ったようだった。
「ふぅ、こんなものかな?」
そう言って、美海は予め用意してあったブランケットをソファに寝そべる琴里に掛ける。
そしてすぐさま後ろを振り返ると
「……おはよう、陸斗。覗き見とは趣味悪いわねぇ」
廊下の方に向かって、弟・陸斗の名を呼ぶ美海。
すると、廊下から近い机の下から陸斗が現る。
「俺がいるの気づいてても琴里ちゃんへのマッサージを続けた姉貴に言われたくないんだけど」
琴里の方を見ながら不機嫌そうに美海へそう問いかける陸斗。
「まぁまぁ、そうカッカしないの。陸斗に琴里ちゃんとのイチャイチャ見せつける為にやってたわけじゃないんだし」
と、特に悪びれる様子を見せない美海。
陸斗がどこから美海が琴里へマッサージをしているのだと気づいたのかは気になるところだが、陸斗にとってはそれよりも、自分に気づいていながらも美海が尚もマッサージを続けた事の方が重要だったようだ。
「……そう言われると余計怪しいんだけど」
美海に散々、イタズラをされてきた陸斗にとっては美海の取る行動全てが怪しく感じるようだ。
いじめっ子が突如として優しくなったら不信感を覚えるのと似たようなことだろう。
すると美海は手をヒラヒラさせ
「さっきのは陸斗へのイタズラとかじゃないから安心して」
と無実であると訴える。
訴えるにしては、説得力の無い態度だったが、それはいつもの事で
「……そういうことにしとく」
陸斗は疑いを残しながらもひとまずは話を終わらせること優先したようだった。
「物覚えのいい弟を持って助かったわ〜」
そう言うと美海はキッチンの方へと足を向けた。
「……だってさっきのは本当に琴里ちゃんの為だもの」
去り際に美海はそう言い残して、そのままキッチンの中へと消えた。
この時のリビングに掛けられてる時計が指し示していた時刻は、7時28分。
みんなが大好きな日曜日の朝の出来事であった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます