第3話 今の幸せを噛み締めて

「おぉ、りっくんすごーーい!」


 先程までは一悶着あったが、なんだかんだで幼馴染ということもありすぐさま仲直りをした陸斗と琴里。

 今は駅前の大きなゲームセンターで遊び、陸斗が大きなぬいぐるみを獲得したことで琴里が大喜びしてるところだった。


「そんなことないってば。慣れれば琴里ちゃんだってできるって」

 陸斗は口では謙遜するが、満更でもないのか彼の口元はかなり緩んでいた。

 と言うよりも彼女である琴里が喜んでいる姿に陸斗はめっぽう満足そうであった。


 しかもこれだけではとどまらず

「ううん、凄いよ。それに私はりっくんが楽しそうにクレーンゲームやってる姿を見てるの好きよ?」

「そ、そんなに褒めたって何も出ないってば!」

「りっくん好き好きアピールだよ〜。ぬいぐるみ取ってくれたお礼にいい子いい子してあげる」

 土曜日ということでゲームセンター内に人がそれなりにいるにも関わらず、より一層陸斗と琴里はイチャイチャし始める。


 当然周りからはバカップルと同然のように見られる。

 琴里は特に気にする様子もなく、少し背伸びして陸斗の頭へと腕を伸ばしそのまま頭を撫でていたのだが、陸斗には周りからの視線がとても痛く感じたのだろう。

「琴里ちゃん、人見てる……」

 そう言って自分の頭の上の細く白い彼女の右手を、優しく掴み頭から離させようとする陸斗。

「……ふふっ、りっくんってば照れ屋さん?」

 顔を赤面させ、自分と目を合わせづらそうにしている彼氏を見てどこか満足そうな琴里。


 自分のしている事に意識してもらえてることが彼女にとってはとても嬉しいことなのだろう。


「……いいじゃん、別に」

 姉の美海のみならず、恋人の琴里にもからかわれたことで陸斗は少々不機嫌になっているようだった。

 いや、不機嫌と言うよりも拗ねているという方が正しいのだろうか。

 見世物にされたのが、彼にとってはあまり宜しくなかったようである。


 だがそれでも

「りっくん可愛い。……大好き」

 この琴里の言葉には逆らえないものがあるのだろう。


 みるみるうちに機嫌は直っていき

「俺も、好きだよ。琴里ちゃんの事、ずっと好き」

 再び公衆の面前でイチャつくのだった。



 そして、

「ずっと……ずっと、好きだからね。琴里ちゃん……」

 今の幸せを噛み締めるかのように、琴里に聞こえないように呟くのだった。




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