第16話 「ホエールズ・ラボ」の正体

 別館には運動系、文家系問わず、様々な部活の部室がたくさんある。

 学校説明会の時にお姉ちゃんが案内してくれた時はとても賑やかだったから、楽しい場所という印象だ。

 とはいえ、わたしは手芸部一択だったから一人で別館へ行くのは初めてだ。

 楓ちゃんがダンス部の部会から戻って来るまで待てば良かった……!

 後悔しながらも心細さを抱えて、わたしは昼休み並みに賑やかな別館へ足を踏み入れた。

 階段で三階まで上がり、ユーチューバー部の部室を探す。

 ゲンシケン、軽音楽部、文芸部……一つひとつ、部屋を確認する。すると一番奥の部屋に辿り着いた。

 雑な文字で「ユーチューバー部」と書かれた紙が部室のドアに貼られている。

 ここだ、間違いない。

 わたしは三回、ドアをノックした。

 反応はない。誰もいないのだろうか。

 わたしは不審に思いつつもドアに手をかけた。

「えっ……?」

「なッ……!?」

 部屋には男子生徒が二人。

 うち一人は梓先輩だった。

 その顔からは一切の血の気が消え失せている。

 人生終わった、と言わんばかりの目だった。

 リングライトなどの機材がセットされた机。

 隅っこにいる、白くてぽってりしたクジラのあみぐるみ。

 天使がわたしに囁いて来た。今ならまだ謝れる、と。

 だけど……わたしは好奇心に負けてしまった。

「もしかして、先輩……『ホエールズ・ラボ』さん……なんですか?」

 梓先輩は何も言わなかった。

 ただ深く溜息をつき、項垂れるように頭を抱えた。

 梓先輩の無言の肯定に、わたしはよろよろと後退りしてしまった。

「ええええ――――っ!?」

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