第15話 ユーチューバー部
翌日の放課後。
部会の時間になっても梓先輩は家庭科室には来なかった。
椿部長や楓ちゃんがLINEを送ったり、電話をかけたりしも、全く反応がなかった。
わたしの事を嫌っていて避けているにしても、反応がないのはいかがなものか。
ここまで反応がないとさすがに不安になる。先輩は部会があるということをだと分かっているのだろうか。
教卓では手芸部顧問の河田先生があからさまにイライラしていた。
腕を組み、腕時計を見ては小さく溜息をつく。
眉間にしわを寄せた冷淡な面持ちにわたしは思わず首を傾げた。
集合時間をとっくに過ぎているとはいえ、あそこまで苛つくものだろうか。
やっぱり梓先輩って見た目通り不良なのかもしれない。
わたしの中で不安がチラチラと見え隠れした。
すると河田先生は深く溜息をついて椿部長に告げた。
「椿部長、私は仕事に戻ります。梓さんたちが来たら私の所へ来るように伝えてください。後は任せました」
「分かりました」
椿部長が頷くと河田先生は家庭科室を出て行った。
その際に小さく、はっきりと呟いた。
「全くもう……これだから不良は――――」
その言葉の続きは聞こえなかった。
だけど刺々しい言葉がチクッと突き刺さる。
入部届を出した時にも思ったけど、あの人は多分、手芸が好きじゃない。
そう思わせるくらいあの人の態度は一部の生徒から評判が良くなかった。
「はあ……」
椿部長が疲れたように溜息をつく。
当然だ。梓先輩たちと連絡を取っている間、ずっと河田先生の小言の相手をしていたんだから。
部員と顧問に板挟みにされて、部長って大変だな……。
わたしはしみじみと思っていると、他の三年生たちが言ってきた。
「マジでなんなのさ、バカワタのやつ!」
「梓くんたちが来ないのは自分のせいだって分かんないのかなぁ~!」
「なんであんな人が教師なんてしてるんだろ……」
三年生、ものすごいヘイトが溜まってるなー……。
わたしはどこか他人事のように思っていると、椿部長に声をかけられた。
「マリアさん、申し訳ないんだけど梓さんたちを探しに行って来てくれる?」
「いいですけど……どこにいるんでしょうか。LINEも通じないなんて……」
わたしの言葉に椿部長は小さく唸ってから、心当たりを教えてくれた。
「多分……ユーチューバー部にいると思うわ」
「ユーチューバー部?」
確か、Youtubeに動画投稿をしたり、学校PR動画撮影に協力したりする部活だっけ?
学校説明会の時にあまりにも強烈過ぎて、わたしはその部活名を鮮明に覚えていた。
「そう。別館の三階に部室があるから、そこにもいなかったらLINEしてね」
「わ、分かりました」
わたしは頷くと、本校舎と渡り廊下で繋がっている別館へ向かった。
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