第4話 アイワナビ―ッ!!

 渋々だったけどわたしは頷いて、ソファに座っているおばあちゃんの隣に腰かける。

 マウスでダブルクリックすると、すぐに動画は再生された。

『アイワナビ―ッ、ルピナス学園!! イエーイッ!!』

 校庭の真ん中で大勢の生徒がハイテンションで叫ぶところから始まった。

「賑やかねぇ」

「そうだね……」

 斜に構えて、感情のない目で眺めながら答えた。

 すると爽やかなスポーツマン風な男子生徒が画面上に現れた。

『ルピナス学園は生徒一人ひとりの「やりたい事」や「なりたいもの」を重視して、学校全体でフォローしていきます』

 そんなものがなかったらどうするの?

 どんな高校だって同じ事は言うだろうし、わたしには全く響かなかった。

 だけど、その皮肉は彼の言葉ですぐに塗り替えられた。

『「やりたい事」や「なりたいもの」は行動すれば見つかるというわけではありません』

「…………!?」

『ですが皆さん、諦めないでください。「やりたい事」や「なりたいもの」は行動して初めて見つかるのです』

 力強い光を宿した瞳。

 わたしを見つめて、離さない。

 何かが粉々に打ち砕かれていく。今まで諦めと共に置いて来たはずのものがわたしに訴えかける。

『我が校に入学を考えている中学生の皆さん、夢を追いかけるあなたを我々は全力でサポートします!』

 生徒会長は力強く微笑みかけると、爽やかでエモいメロディーの音楽が流れ出した。

 ルピナス学園での一日をドラマ仕立てにした映像が映し出される。

 気付いたらわたしは画面を食い入るように見ていた。

 心から青春を、自由を謳歌しているような笑顔。

 こんな自然な笑顔が出せるものだろうか……。

 どんなクラスも、部活も、生徒たちがものすごく生き生きとしていた。

 見るのに夢中になりすぎて、わたしは自然と零してしまっていた。

「いいな……」

 動画が終わり、わたしはソファの背凭れに寄り掛かった。

 いい映画でも見終えたような気分だ。

 胸が躍って満たされる心地いい感覚に包まれる。

 こんな気分になったのはいつ振りだろう。

 余韻に浸っていると、おばあちゃんが嬉しそうに話しかけてきた。

「ステキな学校だね、マリア」

「……うん」

 きっとルピナス学園の生徒は心の底から学校をエンジョイしているんだろうな。

 見ている方まで、思わず走り出したくなるような胸の高鳴り。

 この気持ちを、何にぶつければいいんだろう。

 わたしでも、ルピナス学園に行けるかな。

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