第2話
「あうあ?」
ここは?と言いたかったが上手く言葉が発せない。体もゆるりとしか動かせない。
ここはどこで、自分は誰なのか。
まったく見当がつかない。
とりあえず、そろそろとゆっくりベッドから降りて周りを見て回ることにした。
「んーしょ」
何度見ても中世のヨーロッパのお金持ちの家みたいな広い部屋に所々にある金ぴかな装飾品。重厚感のある遮光カーテンに窓の上の方には綺麗なステンドガラス。上にはシャンデリアが飾られている。
あれが落ちてきたら、俺マジでぺちゃんこになるんじゃ無いか?
「ゔー」
怖いな、よし。あの真下には行かないことにしよう。
しっかし、足元が安定しない。
足場がグニャグニャになったみたいに、真っ直ぐ歩けない。
俺何歳児に転生したんだ…
しっかり役目を果たさない自分の足と闘っていると
不意にダンジョンのボスキャラのいそうなドアが開き、栗色の髪の美男美女が入ってきた。
「あらまぁまぁ!」
「モリス!歩けるようになったのか!」
「あなた!今日は記念日よ!」
「そうだな、マーリン今日は豪華な夕食にしよう!」
「さすが私達の子だわ!」
男の人は顔を輝かせて部屋を急ぎ気味で出て行き、ゆるくウェーヴを描く髪を持つ少女の様な女の人はこちらへ近づいてくる。
母親なのか?
「う?」
「まぁ、どうしのかしら。私はお母さんですよー」
手が伸びてきたので一瞬身構えたが、優しく包み込むような触り方に安心して緊張を解いた。
「あらあら、昨日は練習中に倒れてしまったけど、もう大丈夫そうねー、明日から戻れるかしら?」
…ん?
練習?
「うー?」
「そうねー、若いから大丈夫よね!」
いや、そこじゃ無い。と首を振りたいが、重すぎて振れない。振りたく無い。転けそうだから。
「っ!言ってきた!モリス、今日はパパと一緒にお肉食べような!」
「あう」
お肉という言葉の響きの誘惑に負けて
思いっきり首を縦に振ると、視界がふらつき後ろに倒れた。
【ゴンッ】
「うー……ぎゃあああああああ」
「モリス!」
男の人はすぐさまこの体を抱き上げて、あやす様に頭を撫でてくる。女の人の心配そうな表情も視界の隅に映る。が,俺にはどうしようもない。なんせ、いって!と思っただけなのに涙が止まらないからだ。
泣くことが仕事って割と体力を使うらしい。
しばらく泣きはらした後、重くなってきた目蓋に逆えず、俺の意識は暗闇へと誘われた。
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