乙女ゲームにてんせ…あれ?脇役でした…!
@ac51073zero
第1話
はぁ…はぁ…はぁ
春の大会。あと3点差。
身長が惜しくも165cmで止まってしまった俺森 千晴にとって180〜190cmの選手がゾロゾロいるチームと戦うのはとてもキツかった。身長の3倍近くあるリングにスルリと入れられ、自分のシュートは止められてしまう。しかしここまで点差が開いていないのはすばしっこさで勝っているからだ。
心臓は今にも飛び出さんばかりに鳴り響き、全身で脈打っているような気さえする。
あと一回シュートを決められれば!
周りを見渡してもチームメイトは明らかに肩を上下しながら立っている。それに比べて相手には明らかな余裕が見える。
ここまで来てもまだ千晴は諦めたくなかった。なぜか。それは…
推しの誕生日だったから。
推しの誕生日に負けることは千晴の中では起こり得る最悪の事態だと言って良い。
ホイッスルがなると同時に、チームメイトは糸が切れたように倒れ込み静かに涙を流した。元々弱小だったこのチームが、大会で3連勝したこと自体が奇跡に近かった。観客は祝福し、マネージャーは呆れながらみんなにタオルと水を渡しにくる。
「おつかれ、チビキャプテン」
「…ちびじゃねー」
マネージャーがニヤニヤと笑いながら言ってきたのでプイッと横を向いた。
よく頑張った。
視界にはチームメイトが映る。
がしかし
千晴にとって重要なのはそこでは無い。
推しの誕生日に負けてしまった。
そう
負けてしまったのだ。
「あっ!キャプテン!ちょっと!」
千晴は残っている体力を振り絞り、全力で家に帰った。
誤らなければ気が済まなかったのだ。
ごめんよ!今行くから待ってて!
しかし千晴の思いも虚しく。勢いよく横断歩道を渡ったので、信号の色に気づかなかった。
プーププププップ!!
気づいたのはもう目の前に車がいたとき。
あっやらかした。
千晴は目を閉じて、やってくるであろう衝撃に身を構えた。一回だけ玉突き事故にあったことがある。あのくらいの衝撃なのだろうか。いやもっと痛いかも。
そんな事を考える暇さえあった。
……こない。
衝撃がこない。
なんなら景色が真っ白になったように目蓋の表面に光を感じる。
「…?」
恐る恐る目を開いていくと、
「…はぁ?」
見知らぬ部屋にいた。
豪華なカーテンの付いた馬鹿でかい窓からは日光が差し込み、今座っているベッドはふかふかである。
なんだここ。
…あっそうか。ここは天国か。
一人一人の待遇がいいんだなぁ、
なんてそんなことを思いながら歩…こうとした。がしかし巧く歩けないどころか、地に足がつかずそもそも降りれない。そして極め付けは頭が重すぎてフラフラする。
そーっと自分の手を見てみると、4つのエクボがきれいに並んでいる。
読んだことある。
これ
異世界転生ってやつですよね?
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