第一章 今宵のアヤカシ


 空に日が登り始め、辺りが薄明かるくなってきた。


着物を身につけ、乱れた髪を整えると、露は、提灯を手に持ち、玄関へ向かう。


「そろそろ、帰ります。また、今夜、参ります。」


「待ってるよ。気をつけて、お帰り。」


優也は、露を玄関まで見送ると、静かにドアを閉めた。露は、昨夜、来た道を一人、帰って行く。


ふーむ。これは、どういうことか。

牡丹灯籠ならば、あの露という女がアヤカシであろう。しかし、優也という男。あやつからも、何やら、怪しい臭いがする。

もしかすると、どちらもアヤカシなのか?


いや。生きている人間の臭いも、かすかだがする。

さてさて。どうなることやら。

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