第5話 夏、再来

「夏にあった出来事」から、二年ほど経ちましたでしょうか?

昨日はお盆。実家に子どもを連れて帰っておりました。


お墓参りをして、焼肉を食べて、花火をする。


毎年恒例となりつつあります。

子どもが大きくなるにつれて、両親は背が縮んだように思えて、寂しいやら、感慨深いやら。そんな気持ちになるお盆です。


おばさま方が来ないお盆は、いつもの実家とあまり変わりません。


「早く、花火しよう!」

と息子。

「宿題分からん」

と、実家に持ってきて必死に終わらそうとしている娘。

「どれよ」

と、宿題をみるわたし。


そうこうしているうちに暗くなり、花火をしてキャッキャと楽しむ子どもと母の姿をながめるわたしと父と、猫一匹。


普通のお盆でした。


そして、帰り際でした。

車に乗り、さて帰ろうとした時でした。

「あれ、あんなところに人が歩いてる」

と、母。

「え、どこ?」

息子が母の目線の先へと顔を向けますが、

「いないよ。どこよ?」

と、キョロキョロしますが、姿などなく、田んぼの向こうに明かりの付いた家が一軒。その隣は、細い道を挟んで、山裾があるだけで、真っ暗。


「……また、見たの?」

そう言うと、母は、笑って

「ほんとにいたんだって」

と、目をこらして田んぼの方を見ています。

「だって、よく考えてよ。田んぼには稲があるんよ。その中をこの真っ暗な中、だれも入らんって」

と、わたし。そこへ、

「あっ!」

息子が大きな声を上げて

「なんか、今、明かりが消えた」

と言った。

「消えてないって」

わたしが見た時は、何も変らず、窓からもれる明かりがみえるばかりです。

息子は何を見て、母は何を見たのか。


やっぱり、お盆になると、母は何かを視るようでした。

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