第3話 お寺さんの話

これも以前に母から聞いたお話です。


私自身は、霊など見えません。

ですが、守られているという感覚はあります。

それに、私の育ったところは、裏がお寺で、墓地があります。

その隣には山があり、子どもの頃はその山を駆けまわっていました。


その山の参道を上がると、お狐さんが祀ってあります。

子どもの頃は、暇があれば、そこで遊んでいました。


そして、最近、その山に調査が入り、立札を立てていかれました。

私が、小山だと思って登ったり遊んでいたところは、古墳だと知った時には、少し背筋がゾッとしました。

それも、一つや二つではないのです。

そこらかしこにあるのです。


小道の一つに、古い無縁仏さんのお墓があるとは思っていたのですが、まさか、こんなに多くの古墳があったとは……。



今回は、そのお寺さんのお話です。


そのお寺さんには、おじいちゃんの和尚さんと、その奥さんが住んでおられました。息子さんたちは、他のお寺さんで働いておられます。


その、おじいちゃんの和尚さんが亡くなられた時の事です。



「さっき、お寺の奥さんから聞いたんやけどな」

「うん、何?」

「奥さんが寝てて、途中でトイレに起きたんやって」

「うん」

「それでな、廊下を歩く和尚さんがふら~って歩いてた、って言わはったんよ」


「うっ、えぇぇ、ほんとに?」

私は、あまり霊を信じておらず、疑うように母を見ると、手を振りながら

「私かって、知らんけど、見たんやって」

と、笑いながらサラッという母。


「それで、どうしはったん?」

「それでな、なんか、しゃべりながら、奥さんの横を、すーっと過ぎて行ったったらしいんよ」

「なんか、イヤー」

「まあ、そう言わはんなって。でな、足がなかったんやって」


「イヤー」

「まあ、奥さんが言わはるには、四十九日の法要までは、まだこの世に魂はあるらしいんやって、だから、家に帰って来たったんやないかって、言ってはったわ」


けれど、本当に親しい人にもう一度会えたら、それは「怖い」ではなく「嬉しい」だろうな、と思いました。

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