第2話 湯飲みの中身
これは、怖い話ではありません。
ある日、うちの子と実家に行きました。
それは、冬の寒い日で、熱いものでも飲もうと、熱したやかんに水を入れ、急須に注ぎ、お茶を湯のみに入れました。
ふと、ダイニングテーブルの上を見ると、白い液体の入った湯飲みが置いてあります。
その湯飲みは父のものでした。
私は、その白い液体が何なのか気になって、隣のリビングにいる母に聞きました。
「ちょっと、お母さん。このお父さんのコップに入ってる、白いの何?」
「白いの?お茶じゃないん?」
そう言うと、気になった母が、こちらにやってきて、湯飲みを覗きました。
「ほんとやね。白いわ。何やろ?」
「お母さん、お父さん何飲んでたん?」
「さあ、匂い嗅いでみたら?」
そういうので、湯飲みに鼻を近づけて、くんくんと嗅いでみましたが、無臭でした。
「匂いしないけど?」
「白い液体って何?」
「牛乳?」
「牛乳やったら匂いするやん」
「カルピス?」
「それも、わかる!」
「他、なんで?」
「わからんから、聞いてるんやろ?」
二人で悩んでいても一向にわかりませんでした。
不思議に思って聞こうにも、その父は出かけていて家にいません。
仕方なく、その日は帰りました。
後日、実家に行くと、母が教えてくれました。
「あの白いお茶な……」
「お茶って……」
「あれ、牛乳を飲んだ後にお湯を入れたんやって」
「お湯⁉ また、なんで? しかも、飲んだ後⁇ 」
「そうそう」
そこへ父が帰ってきたので、
「なんで、牛乳飲んだ湯飲みにお湯いれたん?」
と、聞きました。その答えが……。
「ああ、殺菌や殺菌」
「殺菌?」
「お湯入れたら、殺菌できるやろ?」
はは~、ピンときて父に
「洗うのが面倒で、湯飲み洗わんと、その後でお茶を飲む気やったんや」
と言うと、
「あたりや」
と、自慢げに返事をくれました。
いやいや、お湯入れても、衛生的にどうかと思うから洗って欲しいと思いました。
おわり。
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