不思議でちょっと怖い話

立樹

第1話 夏にあった出来事

 あれは夏の話です。


母から、聞いた話。


ある夏休みでした。

私は、お盆を利用して実家へと息子と娘を連れていきました。

その日は、初盆で、いつもよりも仏壇の前に、多く置かれていました。


迎え盆の日なので、夕方になると、提灯やお線香などをもって、お墓へと向かいます。

お墓は、歩いて10分ぐらいの所にある、山の麓にありました。

以前は、そこに埋葬されている場所だったのですが、数年前にキレイに整備されて、あまり怖くはありません。


高い立地にあるので、まわりを見渡せ、風が心地いい程です。

いつものように、お線香を立てると、提灯に火を灯し帰ります。


その晩のことです。


うちの子たちは花火が大好きです。

そして、その晩は、近くで打ち上げ花火大会があり、実家の道からよく見えます。

「キレイだね」

「すごい、大きい!」


と、言い合いながらみていると、母が

「花火しよう!」

と、打ち上げ花火が終わった後は、家で花火大会となりました。

子どもたちがするものなので、大人は、ろうそくの火が消えたらつけ、私は線香花火を楽しんで黙々としていました。


終わったらスイカを食べて、さあ帰り支度です。

「また、おいでね」

と、母が車ででる私たちを送ってくれました。


その時までは、いつもと変わらない、お盆の一日でした。


さて、次の日のことです。

母から、電話があり、

『あんたら、車に乗って帰ったあと、戻ってきてなよね?』

と――。


「うん、そのまま帰ったけど? なんか用やった?」

『いや、それやったらええねんや』


「えー、気になるやん。何?」


『あんたらが、帰った後、もう一度振り返ったら、影だけがな、壁伝いに、誰か通っていったんよ。それで、あんたが戻ってきたのかと思って、『忘れものしたの?』って聞いても、何も答えんと、ふぅ~って消えてしもたんよ!』

「えっ……、それって、お父さんじゃないん?」


『お父さんは、スイカ食べたあと、中におったっていうし、髪型も長かったから違うって』


「じゃあ……、ん???」


『私が思うにはな、昨日初盆やったやろ? だから、おばあちゃんが帰ってきてたんやないかと思ってな』

「ええー!!そんなことあるん!?」

『いやー、おばあちゃんやなくても、お盆やからな、どこの誰かさんかもしれんけどな』


と、笑いながら言う母でした。


不思議なこともあるものです。

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