桜吹雪

 君が桜の木の下で言った言葉

「私が死んだらここに埋めてね」

 今の君は白く、硬くなってしまった

 僕は君の一部を持って走りだす

 走る、走る、走る、あの桜の木の下へ

 素手で地面をかき分ける

「パパ...どうしたの?」

 後ろから娘の声がした

「おててボロボロだよ...」

 娘を抱き寄せる

「この桜はね、ママが好きだったんだ

 だからね、少しでも好きなものの近くで眠らせてあげたいんだ」

 娘が顔をあげた瞬間、勢いよく風が吹いた

 桜の花びらが風に乗り、僕らの視界は桜一色になった

 君が僕らを包み込んでいるみたいで、胸が熱くなる

「ママ...?」

「来年の春にここでパパと花見をしようか」

「うん...3人で!」

 娘は笑顔で言った




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短編集 かめじぃ @kamejii

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