39)空白行は、画面のデザインだと思うことにした

 さて、前回に引き続き、昨今のWeb小説にある表現の考察です。


 今日は、私の苦手な空白行についてです。

 空白行、分かりますよね。



 そう、↑この空白の行です。

 これはWeb小説の特徴の一つでもある訳ですが、正直なところ、私自身が文章力の無さの成せる技だと思っていた節があります。

 だって普通に本を読んでいて、行がすっきすきに空いてます? 空いてない。

 空白行は、自分の表現したいことを読者の想像力に丸投げして、描写を放棄しているようにも感じておりました。


 しかし先日、とある方のエッセイを読んでいて、考えががらりと変わりました。

 なんというか、「私は今どこで活動をしているんだ?」という根本的な投げ掛けを自分自身にしていなかったなと。


 実は私、こう見えて(どう見えて?)、ネット活動歴は長いです。

 まったく別のジャンルではありますが、かつては一日1000人前後の来客があるサイトを運営していたこともあります。

 そんな過去はどうでもいいのですが、その時に考えていたことがサイトの内容(質)と同時に、サイトの見やすさ・使いやすさです。


 例えば、

①欲しい情報にたどり着くまでにはトップページから2~3クリックまでとする

②ポイント欲しさに誘導クリックなどの紛らわしいボタンは作らない


 などです。これらは、各コンテンツの内容(質)にはまったく関係がありません。

 しかし、内容(質)の充実と同じくらいサイト運営に大切な要素でもありました。


 どんなに素晴らしい商品を扱っているお店でも、車で何時間もかかる僻地にあったら買いに行かないでしょう? あれと同じです。

 今ならネット注文という手もありますが、それもお客の利便性を考えた運営の質であり、商品自体の質ではありません。この商品の質と運営の質が合致して、初めて客は手に入れようと動くわけです。

 中には例外もあるとは思いますが、多くはそこまでの付加価値を商品が持っている場合であると考えます。


 そしてWeb小説は、この商品の質と運営の質を両方兼ね備えたコンテンツであると、最近ようやく思うようになりました。


 そう考えると、Web小説にみられる表現もけっこう腑に落ちてきます。

 どんなに面白い小説を書いても、情報が伝わりにくいと読んでもらえないのかなと。


 私は仕事で簡単なチラシやリーフレットのデザインを手掛けることがあります。

 そんな時に考えるのが、「何を伝えたいか」と「どうすれば伝わるか」です。

 説明文を一面に書いたところで、そんなチラシは誰も読まない。

 いろんな視覚効果に訴えて、情報を的確に伝えることを考えます。


 Web小説もまさにこれなんだなと。

 紙面でいうところの小説だと思うから、空白行が気になるわけですが、小説という名のコンテンツだと思えば、ページ全体をどうデザインするかに考えがシフトします。

 となると、今度は空白行がないことが逆に気になり始めました。


 だって、見にくいやんか。(おまえが今さら言うんかい!)


 現在、思いきって時間をとって執筆していることもあり、あれこれと振り返る時間があります。今まで勢いで走ってきた分、いろいろ落ち着いて考えられる貴重な期間だなと感じています。


 まだまだ画面のデザインとしての空白行は試行錯誤の連続ですが、以前ほどは苦にならなくなりました。(でも辛い……)


 ネットは、やはりフロンティア。これからも新しい世界と可能性を私たちに見せてくれるのだろうなと、ワクワクします。

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