37)性表現等に関する議論について
少し前ですが、カクヨムのトップページに表示される性表現が含まれるタイトルについて、あちこちで「倫理に反する」「いやいや表現の自由だ」などという意見を目にしました。それがいろいろ飛び火して、なんだかレイティングで「性表現あり」を付けるのは、「読者を釣り上げるためだ」なんて意見も。
タグならまだしも、レイティングは読み手に対する注意喚起のために付けていた私にとって、こんな風に考える人もいるんだと、素直に驚きでした。だって、レイティングを付けるということは、読者を選別するということです。付けない作品の方が多くの人に読んでもらえます。少なくとも私の作品では、レイティングで読者は釣れていないと思います。(むしろ、去っている可能性の方が高い……)
あらためてレイティングについて考えてみました。カクヨムのレイティングについての記述を読んでみると、「R15」となっています。じゃあ、「R15」ってどのぐらいの表現を言うんだとなります。
私がカクヨムで活動している中でのレイティングの基準は、
【性表現あり(すなさと的R15)】
親子で見るには気まずいけれど、中高校生の子供が読んだり見たりしていても、「そんな年になったかな」と思えるくらいの表現
【公開不可(すなさと的R18)】
保護者として見せることに不快を感じ、仮に子供が見るとしても隠れてしか見ないだろうと思える表現
ざっくりとこんな感じでしょうか。当然ながら、性行為等の描写が物語の主目的でないことは大前提です。先日、映倫が出している「映画分類基準」というものを見つけたのですが、私的にはこれが参考になりました。「R15」だからと、性描写を全て排除しているわけじゃないんですね。
まあ、この表現の問題については、皆さんそれぞれお考えがおありかと思います。表現の何が妥当でその是非について、私はここで言及いたしません。
小説としての表現と大人としてのモラルなど、そういったことを総合的に踏まえて個々人が責任をもって考えていくべきものかなと考えます。
さて、では今日ここで何を話すのかと言うと、この性表現をめぐる議論の手法と言えばいいでしょうか。
前述の「レイティングは読者を釣り上げるために付けている」と訴えていた方々は、当然ながら「性表現を含む作品は全て残らず排除しろ」という論調です。ま、分からないでもない。私も女性として、カクヨムのトップページに眉をひそめたことは数知れず。ここのエッセイでも「恋愛とエロは違う」と語っているとおりです。
ただ、そしたらなぜ私も同じように「反対!」と声を上げないのかということになるのですが、何かが違う気がする。
ではなぜ、そう感じるか。
読み手側から考えた時、気に入らなければ去るだけです。そこに居続ける義務も理由もありません。自分のニーズに合ったものを求めてどこかへ行くのは、消費者として普通の行動だと思えます。その結果、そのサイトが閉鎖しようと知ったこっちゃありません。
そして前述の排除論は、どちらかと言えば、書き手側から発信している意見であり、まるで「私の小説が読まれないのは、清く正しい表現をしているからだ」と言っているようにも感じるのです。
確かに度を過ぎた悪質な表現は取り締まられてしかるべきですが、それはカクヨムだけの問題ではありません。ネット社会全体のこととして、子どもたちへの性教育の必要性も含め、もっと大きなムーブメントとして議論を起こす必要があります。
とすれば、私たち書き手が現状ですべきことは、(品行方正ではないと思う)相手を懲らしめることではなく、新しい価値観を読み手に提示することではないかと思ったわけです。
つまり、書き手として運営側に「反対」と単に訴えることではなく、「こんな卑猥な言葉を使わなくても、面白い小説は書けますよ」と示すことではないかと思うのです。
例えば、過激な表現を含まずメガヒット作品を創作してみる、とか。
そちらの方が、書き手として夢があって俄然やる気が出てきません?
それとも、過激な性表現がないと面白い小説は書けないと、本気で思っていますか? 読み手がエロい描写だけで作品を選んでいると本当に思いますか? 書き手がそう思って創作を諦めてしまったら、やっぱり永遠にそんな作品は書けないかもしれないですね。
私がカクヨムで出会った作品は、性描写の有り無しに関わらず、どれも面白い作品でした。当然ながら性描写の有無で私は作品を選んでいません。だって、物語の核が
ちょっと議論が収まったっぽいので、私なりに感じるところをひっそりと書いてます。
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