二十二話 試合 下
「一か八かあれを使うか……けど、まだうまくいったことがないんだよな」
「そっちから来ないなら、またこちらから行くぞ」
ディナルドが《縮地》で距離を詰め、大剣を振り下ろす。
重い!やっぱり、片手剣で大剣を防ぐのは厳しいな。俺の技量ではまだ難しい。
「おら!おらおら!」
ディナルドが何度も大剣を振り回してくる。俺はそれを防ぎ続けるが段々と腕が上がらなくなってくる。
「そこだ!」
ついに俺は大剣を防ぎきれなくなりもろに攻撃をくらってしまう。
痛ぇ……勝てないのか、俺ではダメなのか……。いや、まだあれがある。一か八かだが、今は成功させるしかない。成功させなければ、現状は何も変わらず、俺は傀儡の王と化してしまう可能性すらある。やるしかないんだ!
「もう、俺の勝ちは決まったものだな」
ディナルドが喋る。
「まだだ。俺はまだ負けていない」
「ボロボロの体で何を言う」
「ふっ、確かにそうだな」
俺は剣を地面に突き立て、杖代わりにしながら立ち上がる。
何故だろうな。やばい状況なのに笑みがこぼれてしまう。今なら、成功させられそうな自信が湧いてくる。
「行くぞ、ディナルド。これで終わらせてやるよ」
「ほざけ」
俺は《縮地》でディナルドとの距離を詰めながら、あれを使う。
「《付与》・【
俺は一回分の【
「そ、それは」
「成功したな」
炎は木剣に纏わりつくが、木剣は炭にはならず形を保っている。
「はぁぁ!」
俺はディナルドに炎を纏った木剣で三撃くらいの攻撃をくらわせてしっかりと防がせる。
「そこ!」
「ぐぅ」
防がせたところにできた隙間から腹に蹴りを入れてディナルドは右に吹き飛ばす。
「【
すぐに魔法を使い、吹き飛ばされているディナルドの背中に移動して、炎を纏った木剣で背中を切りつける。
「うっ」
MP切れで倒れそうになる体に力を入れて踏ん張り、さっきの攻撃で地面を転がっていくディナルドと距離を詰める。
「こ、これで……俺の勝ちだ」
地面に転がっているディナルドの上にのしかかり木剣を突き付ける。
「そこまで!勝者!ジルベルト!」
エドモンドさんが試合の終わりを告げる言葉を最後に俺の意識は途切れた。
Side エドモンド
勝敗を告げ試合を終わらせるとジルベルトが倒れしまった。
「ジル!ミーナ、ディナルドのことは任せた」
「りょうか~い」
ディナルドをミーナに任せてジルに駆け寄る。どうやら、MP切れにより気絶してしまっただけのようだ。
「ジル君!」
「ジル!」
「殿下!」
リオンさん、テンリさん、ソフィアさんの三人が観覧席から試合場へと移動してきてジルへと駆け寄ってくる。
「大丈夫。MP切れで倒れてしまっただけのようだ」
「「よかった~」」
「試合での傷などもありますし、医務室に連れていきましょう」
「そうだな」
そうして俺たちは医務室へと向かって行った。
医務室へと行き、先生に診てもらっても特に異常はないようだった。
「ソフィアさん、少し話があります」
「わかりました」
俺が鋭い目つきでソフィアさんに告げるとソフィアさんはいつもとは少し違う口調で答え、俺についてくる。
「ソフィアさんは王国の特殊部隊であっているだろうか?」
廊下に出てソフィアさんに質問する。
「さすがに公爵家の人間にはわかりますか。ええ、合っていますよ」
ソフィアさんは俺の質問に肯定を返す。
「ならば、お願いしたいことがある」
「なんでしょう?」
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