二十話 試合開始

 あれから数日たち俺はリオンさんの義理の兄である、ディナルド・コント・ローレストと相対していた。


「俺と決闘をしろ!」

「いきなりなんだ。落ちこぼれ王子」


 俺の言葉にディナルドが返す。


「俺はお前に決闘を申し込む」


 俺はディナルドにもう一度言う。


「嫌だね。俺はお前などにかまっているほどの時間はないんだ」


 そう言ってディナルドは去って行こうとする。


「怖いのか?」

「何?」


 俺の言葉に去って行こうとしていたディナルドが振り向く。


「だってそうだろ。他種族をけなしたり、いじめたりする時間はあるくせに俺との決闘からは逃げるんだから」

「挑発しているのか?」


 ディナルドが鋭い眼光で睨んでくる。


「俺の決闘を受けないということはそう言うことだろ。年下の格下とみなしている奴から逃げるなんて貴族の名が泣くな」

「ちっ。いい加減にしろよ」


 ディナルドが俺の胸倉を掴んでくる。


「だったら俺と決闘しろ。そして、俺が勝ったらリオンさんに二度と手を出すなそしてこの学園から出ていけ」

「なら貴様は俺に何を差し出すのだ?」


 俺の提案にディナルドが質問してくる。


「お前は何が欲しい?」

「じゃあ、お前は俺に絶対服従となれ。」

「いいだろう」


 互いに条件を飲み合い決闘が決まった。


「今日の放課後、第一演習場だ」

「そうか」


 そうして俺はディナルドと別れた。

 おそらく、俺に絶対服従をさせた理由は俺が王になった時、傀儡とするためだろうな。俺だけ地位にこだわるやつが理由もなしにそんな条件を出してくるとは思えない。

 そんなことを考えながら俺は図書館へと向かって行った。


Side ソフィア


「大丈夫でしょうか、ジル君は」


 リオン様が第一演習場の中心を見ながら呟きます。


「殿下なら大丈夫でしょう。あの方は自分の決めたことはやりきる人です。しかも、神からの祝福を受けていますしね」


 もうすでに放課後となり、演習場の観覧席には大勢の生徒たちが観戦しています。そして、演習場の中心にはディナルドと対峙した殿下がいます。


「そうですよ。ジルが負けるわけありません。一緒に訓練などをしてきた私が言うんだから間違いありません」


 テンリ様がリオンさんを励ますように話します。


「殿下、応援していますよ」


 私は演習場の中心に目を向けながら小声で呟きます。


◇◆◇


「逃げずに来たな」

「当たり前だろ。あれだけけなされてこないわけには行かない」


 俺は目の前に立つディナルドを睨みながら話す。


「それでは、ジルベルト対ディナルドの試合を始める。両者準備はいいか?」


 エドモンドさんが聞いてくる。


「はい」

「ああ」

「頑張れよ、ジル。よーい、始め!」


 小声で応援してから、エドモンドさんが開始の合図を取り試合が始まる。

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