十九話 陰りの理由
あるところに三人の家族が暮らしていた。
その三人は何の問題もなく穏やかに暮らしていたが、ある日、娘を残して両親の二人が亡くなってしまい、祖父に引き取られることになる。
「ほら、今日からここがお前の家だよ」
「はい……」
祖父は少女に優しく語り掛けるが、少女の顔は暗く覇気のない声で話す。
それからの毎日は少女にとって激動の日々だった。
今まで、平民だったが貴族の家に来たせいで今までの常識がすべて通じなくなってしまい、新しい常識を覚えなおさなくてはいけなくなったのだ。
ただ、少女には才があったのか、どんなことでも器用にこなしてとても優秀だった。
「このケダモノが近づくんじゃないわよ」
だが、優秀だったせいで、新しくできた家族との仲は悪く虐待によく合っていた。
「何故貴様のような獣がここにいるんだ」
ハーフ獣人の少女にできた新しい家族は、外面はよくしているが実は貴族至上主義であり他種族嫌いだった。
そんな家族に少女はストレス発散の対象にされ、体の隅々に打撲の跡が無数にあった。
「お前たち、こんな幼い子に何をしているのだ!」
しかし、そのことを知った祖父が家族を叱責し少女を自分たちの家に置くことにした。
そこから、少女は祖父の家で学園に入学するまでそこで過ごしていたが、他の家族からは目の敵にされて恨まれていた。
◇◆◇
「これが私の過去です。今回の件は恨まれていた私を見つけて、その憂さを晴らそうとしたのが原因でしょう」
「ありがとう。話してくれて」
「これからどうするんですか?」
俺はエドモンドさんに質問をする。
「どうすべきなのだろうな。注意してもやめるとは思えんし」
「今回の件、僕に任せてくれないでしょうか?」
「本気か?」
俺がエドモンドさんに提案すると、鋭い目つきが言葉を返される。
「本気です」
俺はその言葉に対して見つめ返しながら真剣に答える。
「わかった。お前がそこまで言うのだったら、俺たちは見守るだけにとどめておこう」
「ありがとうございます」
「え~。そんなこと簡単に決めちゃっていいの~」
「こいつがここまで真剣な言葉で返してくるんだ。大丈夫だろう」
エドモンドさんが許可を出したことに少し不満げなミーナさんをエドモンドさんがなだめて、その場は解散していった。
「どうして、そんなに優しくしてくれるんですか?」
騎士団の寮を出たら、リオンさんが質問をしてくる。
「友達だからだよ」
俺はそう言って寮へ戻っていった。
本当の理由は俺の前世などが関わってくるから、話せないんだ。ごめん、リオンさん。
それにしても、これでリオンさんの顔に影が差す理由を知れた気がした。
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