十六話 お出かけ
「それじゃあ、私たちは一旦寮に戻りましょうか」
「そうだな」
「あ、あの……」
「うん?」
テンリと話していると後ろから声をかけられたので後ろを振り向くと、ローレストさんがいた。
「あれ、ローレストさん。何か僕に用ですか?」
「リオンと呼んでくれて結構です。あまりその名前は好きじゃないので」
「じゃあ、リオンさんと呼びますね」
俺が名字でリオンさんのことを呼ぶと少しリオンさんの顔に影が差したように見えた。
「はい、ありがとうございます。それでですね、その昨日ぶつかったことを誤っていなかったのでちゃんと謝罪をしようと思いまして」
「別に気にしてないからいいですよ」
「でも、私としても立場がありますのでしっかりと謝罪させてもらう機会をくださいませんか」
「私たちはこの後、寮に一旦戻ってから出かけようと思っているのですが、その時にしてはどうでしょう?」
テンリがリオンに提案をする。
「でも、お邪魔ではないでしょうか?」
「別に俺たちは気にしないし、ちょうど俺もリオンさんと話したかったからいいですよ」
「分かりました。機会をくださりありがとうございます」
リオンさんが俺にお辞儀をしてくる。
「そこまで、かしこまらなくてもいいよ。この学園の生徒であるうちは立場は関係ないんだから」
「それじゃあ、行きましょう」
「はい」
そうして、三人で寮へと向かって行った。
寮の前に着くとすでにソフィアが待っていた。
「お帰りなさいませ、殿下。そちらの方は?」
ソフィアが俺にリオンさんのことを聞いてくる。
「同じクラスになったリオン・コント・ローレストさんだよ」
「ああ。最近ローレスト伯爵家の養子となった女の子ですか」
「知ってるの?」
「はい、名前だけは」
ソフィアはリオンさんのことを知っていたみたいだ。
いつ情報を仕入れているのだろう?いつも一緒にいたはずなのに。
「ソフィアさん。この四人でお出かけしませんか?買わなければいけないものなどもあると思いますし」
「俺も、リオンさんと話したいし、どうかな?」
ソフィアにテンリと俺が質問する。
「かしこまりました。では、今すぐ手続きをしてまいります。少々お待ちください」
そう言って寮の中へ消えていった。
しばらくすると、ソフィアが戻ってくる。
「寮長に許可をもらってきました」
「ありがとう、ソフィア。じゃあ、行こうか」
「はい!」
「本当にご一緒してもよいのでしょうか……」
「いいって。ほら、行くよ」
遠慮しがちなリオンさんに声をかけて学園の敷地から街へと出かけていった。
街では出店などが出ており、その出店をみんなで回っていた。
「ジル。私は服屋に行きたいなと思うんだけどいいかな?」
「私も服を買いたいのですがよいでしょうか?」
「いいよ」
「やったぁ。行きましょう、ソフィアさん」
許可を出すとテンリがソフィアを引っ張り、服屋へと向かって行く。
「ジルベルト様は私の知る貴族とは全然違いますね」
「ジルでいいよ」
「そんなわけには……」
「学生である限りは立場は関係ないから。それでも聞かないなら、命令として使うからね」
「分かりました」
リオンさんが俺のことを敬称を付けて呼ぶので圧をかけてやめさせる。
「なぜ、ジル君はそんなに親しげに接してくれるのですか?」
「う~ん。僕の中ではこれが普通なんだけどな」
「私の知っている貴族の人は、自己中心的な人ばかりでした。なので、ジル君の接し方には違和感を感じます」
リオンさんが俺の接し方について語ってくる。
そうだったのか。けど父様の方針とは全く別だな。貴族派のやつらのことか。
「僕の家族は基本的にこんな感じの接し方だよ」
「そうなんですね。私の……全……違うな……」
「何か言った?」
「いえ、何でもありません」
リオンさんが何かを言った気がしたが、うまく聞き取れなかった。ただ、一瞬だがリオンさんの顔が暗くなった気がした。
買い物がある程度終わり、喫茶店へと出向いていた。
「それでは改めて、ジル君、昨日はごめんなさい」
喫茶店についてから早々リオンさんが誤ってきた。
「別にいいって、気にしてないから」
「それでも、その場で謝らなかったしいろいろ失礼だったと思うので気にしないなんてことはできません」
「昨日、何かあったのですか?」
謝っている理由を知らないソフィアが質問をしてくる。
「私が昨日、曲がり角でぶつかったのに謝らず逃げてしまったんです」
「殿下は優しいので許そうとしているわけですね」
「ああ」
俺はソフィアに返事を返す。
「でも、私としても何もお詫びをしないわけには行きませんので何かしてほしいことはないでしょうか?」
リオンさんが俺たちに案を聞いてくる。
「やってほしことか……」
特にはないが、リオンさんの気持ちもちも解るから何か提案した方がいいんだろうが……
「じゃあ、俺と友達になってくれない?」
「え?」
リオンさんは素っ頓狂な声を上げる。
「そんなのでいいんですか?」
「それ以外だと特に思いつかないし、リオンさんとは友達になりたいと思っていたからね」
リオンさんの言葉に素直に答える。
「分かりました。やっぱり……優……ですね」
「何か言った?」
「いえ、何でもありません」
少しリオンさんの顔に陰りが出た気がしたが、何でもないというので気にしたいでその後は楽しく過ごしていった。
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