十七話 ある男
翌日になり、学園の図書館へ来ていた。
「今日は何を勉強するんですか?」
「今日は、世界の地理について勉強しようと思ってるよ」
「ジルは地理って言葉を知っているんですね」
テンリが感心したような声を上げる。
やべぇ。口を滑らしてしまった。確かにこの年で地理って言葉は知らないか。
「まぁね。勉強は頑張ってるから」
とっさに言葉を放ち誤魔化す。
「早速、勉強していくか」
「はい、そうですね」
この世界には五つの大陸と天空都市と呼ばれる都市がある。俺たちのいるこのクロノ王国は北西の大陸であるセヴィオ大陸の中にある。そのほかの大陸は神獣が住まうと言われている南西のアーディヌ大陸、魔族たちが多くいる北東のセレネ大陸、未開の地である南東のルフ大陸、そして不可侵の領域と呼ばれる中央大陸の五つの大陸があり、中央大陸が不可侵の理由は世界の根幹を担うと言われている世界樹があるからである。そして二つ目の未開の地が天高いところに浮遊し続けている天空都市には天使が住まうという伝説が語り継がれている。
「そろそろ、実技の練習をしに行くか」
「確かにある程度、大陸などについては簡単に学べましたからね」
俺たちは図書館から出ていき第一演習場に向けて歩き出す。
しばらく歩くと人だかりができている場所に着いた。
「何故貴様のようなケダモノがこの学園にいるのだ」
「ごめんなさい、ごめんなさい」
人だかりの中心にいたのは上級生と思われる男とその男に髪を引っ張られているリオンさんだった。
「ちょ、ジル!」
俺の体はそれを見た瞬間、駆け出していた。
「その手を放せぇぇ!」
「なっ」
俺は男に殴り掛かった。
男はリオンさんから手を放し俺の攻撃を避ける。
「誰だ!貴様は!」
いきなり殴りかかってきた俺に男が叫ぶ。
「ジル君……」
「もう大丈夫だからね、リオンさん。俺はジルベルト・ロワ・クロノスだ!」
俺はリオンさんに優しく話しかけた後、男に向かって名乗る。
「ああ。お前が今年入学してきた第三王子か。召喚獣を召喚できなかった落ちこぼれの王子が何のようだ」
「俺は友達が苦しんでいるのを見過ごせなかっただけだ」
「落ちこぼれがケダモノと仲良くするか。実にお似合いだな。くっくっくっ」
男は俺たちのことを見ながら笑いだす。それを見たテンリが武器を取り出し、男に突っ込んで行こうとする。
「やばっ」
「貴様ら!何をしている!」
俺が少し焦っていると突然、人だかりの外から声が聞こえ、人だかりに道ができる。
「ちっ。騎士団のやつらが来やがった」
「ま、待て!」
男は声の主を見た瞬間逃げていった。
「あいつは任せたぞ」
「任せてよ!」
さっきの声の主と思われる男が横にいた女に声をかけてこちらに近づいてくる。女はさっきに逃げていった男を追って行った。
「俺は学園騎士団の団長をしている、エドモンド・デュク・サンドリアだ。君たちは事情説明をするために放課後は騎士団の寮に来なさい」
「エドモンドさん!」
「ちゃんと来いよ、ジル」
そう言ってエドモンドさんは去っていった。
エドモンドさんは俺の親戚である公爵家の長男で、以前会ったことのある人だ。
「助けてくれてありがとう、ジル君」
「全然大したことないよ。友達を助けるなんて当たり前だから」
「あの人は誰だったんですか?リオンさん」
テンリがリオンさんに質問する。
「あの人は私の義理の兄です。詳しいことは放課後に話します」
「それもそうだな」
そうして俺たちは解散していった。
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