五話 夢

 目を開くとそこには草原が広がっていた。上を見上げると雲一つない蒼穹の空が広がっている。


「ここは夢の中か?」


 俺は突然の状況に頭を回す。

 さっきまで自室で眠りに入ろうとしていたから、おそらく夢なのだろう。いきなり、このどこまでも続く平原に飛ばされることなんて無いはずだ。


「やっと、ここへ来ましたね」


 突然、声が聞こえてきたがどこから話しているか全く見当がつかない。

 まるでこの空間全体に響き渡るように聞こえる。


「誰?」


 初めて聞く声に疑問の声を上げる。


「私は、いつか貴方と相見える者とでも言っておきましょう」


 優しさを感じさせる女性の声が空間に響く。


「ここは夢の中なのですか?」


 俺は女性の声にここが夢の中なのか確証を持つために質問する。


「はい、そうですよ。私は貴方の人となりを知るために、夢の中にお邪魔させて頂きました」

「人となり?」


 天から響く女性の声に疑問の声を上げる。

 一体なぜ、俺の人となりを知る必要性があるのだろう?


「はい。なので、私に貴方の話を聞かせてください」

「別にいいですけど」


 話して困ることは無いので、女性の声に許可を出して今までの三年間を語り始める。


 しばらく話していると突如異変が起こる。


「な、なんだ?」


 地面が地割れを始め、空には亀裂が入る。


「時間のようですね」

「どういうことですか?」


 この状況を理解しているような女性の声に質問をする。


「安心してください。これは貴方が目覚めようとしているだけですから」


 俺の質問に安心させるような優しい声音で答えてくれる。


「それではまた」


 その女性の言葉を最後に俺の意識は途切れた。


◇◆◇


「う〜ん」


 目を覚まして布団から起き上がる。


「何か不思議な夢を見ていた気がする」


 印象に残るような不思議な夢を見ていた気がするのに思い出すことができない。


 コンコン


 俺の部屋の扉がノックされる。


「失礼します。起きていたのですね、殿下。おはようございます」

「おはよう、ソフィア」


 ソフィアが俺が起きていることに気付いて挨拶をしてきたので、挨拶を返す。

 すると、同時に室内に入ってきた使用人たちが、立ち上がった俺を着替えさせ始める。


「ソフィア、今日の予定は?」

「今日は、魔法の授業がございます」


 そうか、今日はアリアさんの授業の日か。

 俺はそう思いながらソフィアと共に食堂へと向かっていった。


 ソフィアが食堂の扉を開け促されるまま部屋に入るとまだ誰も来ていなかった。


「今日は僕が1番乗りか」

「殿下、どうぞ」


 ソフィアが俺の席の椅子を引いたのでそこに座る。

 しばらく待っているとだんだん人が集まってきた。


「ジル!聞いたぞ。お前のステータスは凄いな。さすが、私の息子だ」


 今日はこの国の国王であり俺の父親である、グレゴリオ・ロワ・クロノスも朝食に参加していた。

 見た目は、金髪金眼でガタイがよくダンディな人である。


「父上、食事の挨拶をしてください」


 ロベルト兄様が父様に食事の挨拶を促す。


「おお、そうだな。神に感謝を」

「「「感謝を」」」


 そんな感じで食事が始まった。

 ちなみに今回の献立は鳥を主軸に置いた献立だった。

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