三話 武術講師
俺のステータスを見たドナートさんが驚愕の表情を浮かべる。
「ど、どうかしたんですか」
「凄いですよ、ジルベルト様!」
俺が困惑しているとドナートさんが凄い剣幕で俺の肩を握り言葉を放つ。
「どうかしたの?ドナート」
ドナートさんの突然の豹変ぶりを疑問に思ったのか、イザベラ母様が近づいてくる。
「イザベラ様、ジルベルト様のステータスを見ればわかると思いますが、基礎ステータスが最低値でも人族の5レベル相当、最大値であれば10レベル相当もあります」
イザベラ母様がドナートさんに説明を受ける。
「そうなの?ジル、見せてくれる?」
「は、はい」
イザベラ母様がお願いしてきたので、了承しステータスを見せる。
「まぁ!凄いわ、ジル!さすが私の自慢の息子ね!」
イザベラ母様が喜びながら俺を抱きしめてくる。
「私の弟なんだから当然よ!」
イザベラ母様と一緒にステータスを見たエミリー姉様が抱きしめられている俺の隣で胸を張りながら言う。
「あ、ありがとう。でも、何が凄いのかわからないんだけど……」
「あのね、ジル。普通、人族の1レベルのステータスはすべて10になっているの」
イザベラ母様が理解してない俺に説明してくれる。
「でも、あなたのステータスはそれを上回っていたのよ。今までにも1レベル以上のスタータスの記録はあるけど、それでも高くて3レベルくらいだったのよ」
なるほど、俺のステータスは今までの記録と比べるととても高いようだ。
転生者の特典かなぁ?
「これからが楽しみですな」
「ええ、本当に」
ドナートさんの言葉にイザベラ母様が笑顔で答える。
そんなこんなでステータスの儀が終わっていくのだった。
◇◆◇
城に戻り、馬車から降りると2人の人物が俺たちのことを待っていた。
「おう、やっと帰ってきたな」
「おかえりなさい、4人とも」
「「ただいま」」
「ただいま帰りました」
「ただいま。2人とも、準備馬できているの?」
俺たちの帰り待っていたイグナシオ兄様とロベルト兄様に挨拶をすると、イザベラ母様が何かの準備ができているかを聞く。
「できてるよ、母上」
「そうなのね。それじゃあ、ジル。私たちは戻るからあなたは2人の案内に従ってね」
イザベラ母様が確認を終えると、俺に話しかけ城の中へと戻っていく。
「俺たちも行くか。俺からでもいいか?ロベルト」
「いいよ、兄さん」
「どこに行くの?」
俺は一体どこに案内されるのか聞いてみる。
「うん?騎士の訓練場だよ」
イグナシオ兄様が答えると2人はどんどん進んでいく。俺は慌てて後を追った。
しばらく歩くと金属の打ち合うような音が聞こえ始める。
「ここが訓練場だ」
目の前には草の生えていない踏み固められた土が広がっており、その上で騎士が模擬戦をしたり、素振りをしたりしている。
「おい!リカルド、来たぞ!」
「はい!」
イグナシオ兄様が声を張り叫ぶと、騎士の指導をしていた人物が返事をしてこっちに近づいてくる。
「どうもはじめまして、ジルベルト様。私はこの国の王国騎士団の団長をしております。リカルド・ヴィコント・セクニメルと申します。武術講師を仰せつかりました。よろしくお願いします」
リカルドさんは自己紹介をして、右手を左胸に当てながらお辞儀をする。
見た目は四十代くらいの男性で亜麻色の髪をしている。
「僕はジルベルト・ロワ・クロノスです。こちらこそ、今日からよろしくお願いします」
「はい。では、早速行きましょう」
自己紹介した後、リカルドさんが移動を促してきたので、それに従い5人で移動する。
少し歩くと室内に通される。
その室内の中には、様々な木製の武器が並べられていた。
「それでは、ジルベルト様。ここに置いてある武器を素振りしてみてください」
「わかりました」
リカルドさんの指示に了解の言葉を返し、武器に目をやる。
並べられている武器には、直剣、大剣、短剣、槍、斧、槌、鎌があり、その中から直剣を選び素振りをしてみる。
「ありがとうございます、ジルベルト様。同様に他の武器も素振りしてください」
「わかりました」
リカルドさんに言われた通りに、残りの武器も順番に素振りをしていく。
「ありがとうございました。私は最初の直剣が1番合っていたと思ったのですが、どうでしたか?」
ひとしきり素振りが終わった後、リカルドさんが質問をしてくる。
「はい。僕も直剣が1番しっくりきました」
「それでは、明後日から直剣を教えていきますね」
「頑張ります」
「じゃあ、そろそろ次に行こうか」
武術の授業方針が決まったところで、ロベルト兄様が声をかけてきた。
「それでは、私は訓練に戻りますね」
そう言ってリカルドさんは去っていく。
「俺らも行くか」
「次はどこに行くんですか?」
俺は兄様たちに次の目的地を質問する。
「魔法の講師は客として来ているから、客室に行くよ」
「なるほど」
そうして、俺たちは城の客室へと足を向けた。
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