二話 ステータス

 家族との食事が終わり自室に戻ってきた。


「ソフィア、ステータスの儀まであとどれくらい時間がある?」


 使用人が俺の服をステータスの儀用に見繕われた衣装に着替えさせている間にソフィアにたずねる。


「あと、3時間ほど時間がございます」


 3時間かぁ。だったら図書室にでも行くかな。


「図書室に行くから、準備しといてくれ」

「かしこまりました」


 ソフィアが了承の言葉を述べると、部屋から出て行き30分くらいしてから戻ってくる。


「準備が整いました、殿下」

「わかった。それじゃあ行こうか」

「かしこまりました」


 準備が出来たようなので、ソフィアを連れて図書室に向かう。


 廊下を歩き、図書室に着く。

 ソフィアに促されるまま入室していく。室内にはいくつもの本棚が有り、様々な本が置かれている。

 そんな部屋の中にある机の中にひとつだけ本がいくつか置かれている机がある。


「ソフィア、今日も頼む」

「かしこまりました。それにしても殿下は勉強熱心でございますね」


 ソフィアが微笑みながら了承する。ちなみに、俺は少し前から図書室への入室の許可が降りて、ソフィアに文字を教えてもらっている。

 出来るだけ情報を手に入れられる様にするためだ。


「立派な大人になりたいからね」

「そうでございますか。それでは早速、今日も始めていきましょう」


 ソフィアの教え方は丁寧でわかりやすいのでとても勉強になる。

 その後も、ステータスの儀に行く時間まで文字を教えてもらった。


「殿下、そろそろ今日は終わりにしましょう」

「わかった」


 時間はあっという間に過ぎていき、そろそろステータスの儀に向かわなければいけない時間が近づいてきた。なので、ソフィアと共に城の正門に向かう。

 しばらく歩いて正門に着く。すると、そこには馬車と2人の人物が待っていた。


「あれ?ロベルト兄様は行かないんですか?」


 俺は行く予定の人物がいなかったので、待っていたエミリー姉様とイザベラ母様に質問する。


「ロベルト兄は用事ができていけなくなったって言ってたわ」

「だから今日は、3人で行くことになったのよ」


 ロベルト兄様には用事が入ったらしい。イグナシオ兄様と他の母様たちが来ないことは知っていたが、一体ロベルト兄様にはどんな用事が入ったんだろうか。


「全員そろったことだしそろそろ行くわよ。みんな馬車に乗って」


 イザベラ母様に馬車に入るよう促されたのでエミリー姉様と一緒に馬車に乗っていく。

 そういえば、馬車には初めて乗るけど乗り物酔いとか大丈夫かな?


「出して頂戴」


 俺の心配に気が付く様子もないイザベラ母様が御者にそう伝えると馬車が動き出す。

 結果から言うと心配は無用だった。馬車に乗っていてもそんな予兆は無かったし、それよりも、転生してから初めて外に出るから、そっちの楽しみの方が強かった。ちなみに、ステータスの儀が行われるのは貴族の家が集まっている区画にある教会だ。

 俺が外の景色に目を輝かせていると馬車が止まる。


「着いたみたいだから、降りるわよ。2人とも」


 イザベラ母様は微笑みながらこちらに語りかけてくる。そんなイザベラ母様を見て自分が舞い上がっていたことに気付かされた俺は顔を赤くしてしまう。


「うん?どうしたの?ジル」

「な、何でもないよ。エミリー姉様」


 赤くなった顔を隠すために俯いていた俺を心配したのか、エミリー姉様が顔を覗いてきたので慌てて顔を上げて言葉を返す。


「そう?ならいいけど。何かあったら早く言ってね」


 そう言いながらエミリー姉様が馬車から降りて行ったので、それに続いて俺も馬車から降りて教会に入っていく。


「綺麗だ……」


 教会の中は、たくさんのステンドグラスがあり、そこから差し込む光が奥にある女性の像を照らしていて幻想的な光景が広がっていた。


「凄いでしょ」


 幻想的な光景に感嘆の表情を浮かべている俺にエミリー姉様が自慢するような声音で話しかけてくる。

 そんな感じでエミリー姉様と一緒に教会の中を眺めているとイザベラ母様と見知らぬ人物が近づいてくる。


「この人が今日、あなたのステータスの儀を執り行ってくれる人よ」

「お初にお目にかかります、ジルベルト様。私はこの教会で神父をさせていただいている、ドナートと申します。以後お見知り置きを」


 イザベラ母様が神父服を着ていてお年を召しているドナートさんを紹介してきた。


「初めまして、ドナートさん。僕はジルベルト・ロワ・クロノスです。今日はよろしくお願いします」


 俺はお辞儀をしながらドナートさんに自己紹介をする。


「はい、お任せください。ジルベルト様。それにしても、まだ3歳だというのに礼儀正しい子ですな。イザベラ様」

「ええ。自慢の息子ですから」


 ドナートさんの俺の褒める言葉にイザベラ母様が微笑みながら返す。


「ねぇ、早くしてくれないかしら」

「これはこれは、エミリー様。申し訳ございません。では、始めさせてもらいますね。ジルベルト様、こちらへ」


 エミリー姉様の催促の言葉にドナートさんが謝り、ステータスの儀に取り掛かる。

 一応、俺のステータスの儀なんだけどなぁ。

 ドナートさんに促されるまま歩いていくと魔法陣の描かれた場所に連れてこられる。


「さあ、この魔法陣の中心で片膝をつき神に祈るポーズを取ってください」


 魔法陣の目の前には大きな女性の像があるから、恐らく、本当に神に祈れということなのだろう。

 ドナートさんに言われた通りに魔法陣の中心で神に祈るポーズを取ると、ドナートさんが俺と女性の像の間に立つ。


「それでは、始めさせていただきます。『神よ、彼の者にステータスの恩恵を与えたまえ』」


 ドナートさんが始まる合図を取り、詠唱する。すると、魔法陣が光り始めて俺を包み込む。


(ステータスを付与します。封印を確認、同時に解除します)


 俺の頭の中に無機質な声が響く。

 無機質な声が聞こえなくなると魔法陣も光りを失っていった。


「これでステータスの儀は終わりになります。それでは、ジルベルト様。ステータスと唱えてみてください」


 俺は立ち上がって、ドナートさんに言われた通りに唱える。


『ステータス』


 すると、俺の目の前に半透明のプレートが出現する。


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名前 ジルベルト・ロワ・クロノス

種族 人族 職業 なし

Lv.1  MP   100/100

筋力 100  防御力 100

魔力 50  知力 50

俊敏 100  技量 100

運 50


スキル

神々の祝福、神獣の加護、火魔法Lv.1、光魔法Lv.1、時空魔法Lv.1、偽装Lv.10、隠蔽Lv.10


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「それがステータスです。そして、基本的には許可を出した者しか自分のステータスが見られることはありません。それと、私はステータスを記録する義務がありますので、ジルベルト様、私にステータスを見せてください」

「わかりました」


 何故か手に取るようにステータスの使い方がわかるので、それに従いドナートさんにステータスを見せる。


「こ、これは」

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