第189話「本来の道」
アインとウルスラは本人たちにその気がないなら、そのつもりで考えたほうがよさそうではあるかな。
と言ってもそうなると俺と蛍とのコンビを解消するような提案を、俺自身の口からすることになってしまうか?
とてもじゃないが今さら言い出しにくいんだが、どうするかな。
「考えてもらちが明かないな。体を動かせるところに行ってみないか?」
「いいけど、スイーツを食べた直後なのに?」
アインが苦笑する。
どうやら行き当たりばったりでアイデアを出してるとバレているようだ。
「そうだったな。何かアインは思いつかないか?」
逆に質問をしてみる。
何でも俺が決めるというのもあまりよくない。
たまには彼の意見を聞いてみるのもおもしろいだろう。
「君が作ったあのボードゲームをやればいいんじゃないかな? あれなら頭を使うだけだからちょうどいいよ」
「そうだな。部へ移動しないと行けないが」
「いいさ、それくらい」
アインが笑って立ち上がったのでつき合うことにした。
………そして。
「アイン、強くない?」
ぼろ負けという単語が目の前に現実となっていて、俺はうめく。
「実ははまっちゃって練習したんだよ。面白いね、これ」
何ということでしょう。
アインはいつのまにか俺よりもずっと強くなっていたのだ。
「エースケ、案外強くないね。生みの親なのに」
「競技を考案することと、競技が強いのは別物ということだろう」
知らないうちに観客と化していた先輩たちが勝手なことを言ってる。
反論する余地はないけど。
「ひゃひゃひゃ、そういうものだよ」
顔を出したウィガン先生が笑う。
「出てきたものはいろんな人の手で磨かれるが、創り出す力を持つ者はすくない。【ひらめきはひとりで、発展はみんなで】と言うだろう?」
彼の言葉に俺以外の全員がうなずく。
「そういうものなのですよね」
俺は空気を読んでわかったふりをした。
「シジマくんは最近、戦いに偏りすぎているようだ。研究に立ち戻ってみなさい。研究は新しい手段を生み出せるのだから」
と言ってウィガン先生は去っていく。
俺にアドバイスするためにわざわざ顔を出してくれたのかな?
「諭されちゃったね」
とリプレ先輩が優しく言う。
「ええ。見事にいまの俺のことを把握されてました」
同時に頭の中の霧の一部が晴れて、視野が開けたような気分にもなっている。
錬金術レべルをあげて作れるものを増やす。
開発したものでお金を稼ぎ、人脈も広げる。
錬金術師である俺の戦い方としてはこっちのほうが王道なのだ。
ガルヴァに気を取られすぎて、本来の道を見失いかけていたのかもしれない、と反省する。
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