第177話「覚悟2」
「終わったら大量のモンスターが出てくるかも」
まずいと思い早口で言う。
「ではそれがしが先に切り込みます」
蛍は即断即決し、一気に二人組に襲い掛かった。
「ぐわ!?」
「なんだ!?」
彼女の高速の不意打ちに一人は何もできずに倒されたが、もう一人はとっさに跳躍して避ける。
そこへ俺はデバフ用ポーションを投げつけた。
「ぐうっ! くそ、あと一歩で……」
こっちのほうがガルヴァなんだよな。
俺のポーションじゃ拘束するのは難しく、ガルヴァは儀式を完成させる。
「来たれ、漆黒の軍勢よ!」
魔法円が光った瞬間、蛍がガルヴァを切り捨てた。
いい判断だと内心驚嘆したが、そればかりじゃいられない。
魔法円が光を放ってモンスターたちを呼び出す前に、やるべきことがある。
土でも何でもいいから消したり改変すれば、それだけで効力を失うのだ。
とっさのことだったので土を魔法円の上にかぶせ、落ちている石と葉っぱを少し離れた位置に置く。
それでも魔法円は効果を失って光が消える。
ガルヴァたちがやろうとしていたモンスターの召喚は失敗に終わった。
ホッとした後、ガルヴァを見に行ったらすでにこと切れている。
「すみません、とっさのことだったので殺さない余裕がありませんでした」
と蛍は謝ってきた。
「いや、大丈夫だよ。逃げられるのがまずかったから」
俺は気にするなと答える。
生け捕りにしたって本当のことを話すかわからないし、仲間が取り返しに来て逃げられるかもしれない。
それを考えれば、敵の勢力からガルヴァという駒を消せた分だけマシな結果になったと思う。
「問題はこいつだな」
もう一人のほうは手加減を間違えなかったらしく、気絶した状態だった。
「どうしましょう?」
「引き渡すべきだろうな。連続モンスター発生事件の容疑者として」
蛍の問いかけに答える。
「信じてもらえるでしょうか?」
「そこまではわからない。やれることをやろう」
正直、信じてくれずに調査がはじまらなかった時のことなんて、考えたくもない。
だが、一応信じてもらう努力くらいはしよう。
「ここの位置がわかるように地図をつけて、この男がモンスター発生事件の容疑者だと紙に書いて、警備兵の詰め所にでも連れて行こう」
と提案する。
「……いたずらだと疑われないとよいですね」
蛍は反対こそしなかったが、懸念は示す。
歴史の修正力ってやつがこの世界にあるなら、まともに相手にされないかもな。
「そこまでは知らないさ。……ここで始末しておくほうがいいかもしれないけど」
蛍はガルヴァを殺したことに何にも感じていないようだ。
たしかキャラの過去でも原作がはじまった時にはすでに悪党を殺した経験がある。
「それがしがやりますよ?」
「いや、俺がやるよ」
殺す覚悟云々、やるなら今がチャンスだろう。
近くには蛍しかいないんだから。
……手ごたえはあったし、意外と何にも感じなかった。
もしかしてシジマエースケの感覚のほうがずっと強いんだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます