第170話「いい加減はっきりさせたい」

 図書館にやってきたのは、言うまでも地図を確認するためだ。


 ダンジョンに出るモンスターやドロップ、主要な敵やアイテムは覚えている自信があるものの、地理関係は正直かなり怪しい。


 ダンジョンマップならともかく、国とダンジョンの位置はゲームを攻略するうえで必要なかったもんな……覚えてるガチプレイヤーならいたけど。


「学園から通えるダンジョンの地図を見たいのですが」


 自分で探すのは大変なので、カウンターにいる図書委員の女子生徒に相談する。


「ダンジョン系の地図? 一年にはまだ早い気がするけど」


 二年生らしいメガネがよく似合う先輩は、そう言いながらも教えてくれた。


「地図ならレの二にあるはずよ。レの棚は窓側の一番奥ね」


「ありがとうございます」


 棚の名前だけじゃなくて位置も教えてくれるなんて、親切な先輩だ。


「どういたしまして」


 にこりと微笑む姿はかなり可愛い。


 名前を知らないのでおそらくゲームだとサブキャラですらなかった人だけど、やっぱりレベル高いな。


 男性プレイヤーを想定したゲームだけのことはある。 


 目当ての本(と言うか地図)は借りられておらず、棚にあったので手に取って近くの椅子に座った。


 まずは学園があって北のほうに水蛇のほこらがあって、てんこ森は学園から見たら東の方角になるのか?


 これだけだと正直意味がない情報だが、ゲームでガルヴァが暗躍していたポイントを思い出してみよう。


 学園から日帰りで行ける距離でガルヴァが暗躍するダンジョンはない。

 だが、だからこそ怪しいと考えてもいいんじゃないか?


 いくつかあるうち、可能性がありそうなのは西にある「ヘレヘレ森丘」、南のほうにある「フラフラ沼」か。


 ……東、北、と来ているんだから次は西っていうのは安直すぎるか?


 でもまあ元のゲームはけっこう安直なところ多かったから、試してみるだけの価値はありそうだ。


「エースケ殿?」


 横から見ていた蛍が、指を止めて考えこんだ俺に遠慮がちに声をかけてくる。


「悩んでいるなら相談に乗りますよ? それがしでよければですが」


「うーん、そうだな」


 どうせ理由を話して賛成してもらう必要があるんだから、今話してしまってもいいか。


 俺は考えていたことを話す。


「安直な予想になるんだが、他に手がかりもないんだしダメで元々だと試してみようかと思っているんだ。蛍はどう思う?」


 問いかけると彼女は小さくうなずく。


「手がかりらしい手がかりが何もない現状ですから、まずは動いてみるべきだとそれがしも思います」


 あっさり賛成してくれて何よりだ。


 ヘレヘレ森丘は学園から馬車を使って半日ってところか。

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